非線型蒲公英 =Fortsetzung zwei=-11
と、その時、ガラガラッ!! と勢い良く部室の扉が開かれた。
「んがぁああわわ!!」
驚いて、再度、強かに妃依と頭をぶつけてしまう。
「…痛いです」
雰囲気も何もかも、ぶち壊しだった。
扉を開けた人物は、そんな二人の様子を見て、フフ、と笑みを浮かべた。
「ええと、こういう時、姉としては祝福してあげるべきなのかしら? んー、おめでとう、聡」
パチパチと手を叩きながら微笑む琴葉。
「で、出て行ってくれぇぇぇぇぇぇ!!」
「あら、私の事は気にせず、続けて頂戴」
「…無理です」
妃依は恥ずかしそうにかすれた声で呟いた。
「どうしてかしら? 別に性交渉をしろ、と言っている訳ではないのよ?」
「ダアァァァァァァァァッ!!」
「騒がしいわね、全く」
「全く、じゃないよ!! 何しに来たんだよ!? 姉さん!!」
「別に、ただの暇つぶしよ」
ああ、この人は…絶対にタイミングを見計らっていた…確信犯だ…。
「…あの、琴葉先輩」
「何かしら? …ああ、それと、義姉さんって呼んでも良いわよ? 妃依」
「…け、結構です…それで、あの、今日の夕飯は何が良いですか」
妃依はとにかく、どうでも良い質問でこの場は誤魔化す事にした(誤魔化しきれそうも無かったが)。
「そうね、何でも構わないけれど、肉料理が食べたいわ」
「姉さん、それは何でも構わないとは言えないだろ…」
「…材料は」
「無いから、買ってきて頂戴、聡」
「俺!?」
「当たり前でしょう? 聡は食費担当なんだから」
「いや…姉さん、何でだよ…ああ、もういいです、解りました、買って来ます…」
「じゃあ、私は先に帰ってるから」
そう言うと、琴葉はさっさと部室を出て行ってしまった。
「姉さん…ホントに嫌がらせをしに来ただけなのか…」
「…みたいですね」
二人は向き合うと、はぁ、と同時に深く溜息をついた。
―――かくして、二人に平穏は訪れないのだった。