黒い魔獣-8
「コラ」
キャラが軽く蹴ると目が黒に戻る。
「ん?あぁ、なんか魔獣とは気が合うな……」
魔獣の方が勝手に行動しなければ上手くやっていけそうだ、とアースは笑う。
『お待たせしました。お会いになるそうです』
しばらくするとミヤが戻ってきて伝え、再び鏡面から消える。
次に現れたのは先ほど国王が言った通りの風貌の人間。
『久しぶりじゃな、ドグザール殿』
国王のフルネーム、ドグザール=キョウ=ゼビアの名を出して自分が本物なのをアピールする。
「ご足労すまないオーウェン殿」
『いや、構わんよ。魔獣のハーフなど珍し………んん?』
オーウェンは会話の途中で眉をひそめる。
『キアルリア!!そこに居るな!?』
「ひっ」
オーウェンに名指しされたキャラは息を飲んで背筋を伸ばす。
さすがファンの守護神……鏡越しにわかるとは恐れ入った。
『姫様!?』
ミヤがオーウェンを押しのけて鏡面に現れる。
観念したキャラは渋々ソファーの後ろから出て、鏡の前に立つ。
「久しぶり」
『まぁまぁまぁ!そんな所にいらしたのですか?!』
そんな所とは失礼な……と、ゼビア側の人間は嫌な顔をする。
『ご無事で良かった……本当に……心配しましたのよ?』
「うん、ごめんね?」
泣きじゃくるミヤの肩を抱いて慰めたオーウェンはさりげなくミヤを鏡の前からどかす。
『ドグザール殿もそちらの学長殿も知っていて黙っておったのか?』
オーウェンの視線と言葉に国王とベルリアはギクリと固まる。
「私がお願いしたのです。お2人を責めないで下さい」
キャラは真っすぐにオーウェンと目を合わせて話す。
「それよりも、今は急ぎの用事があります」
『ああ……魔獣ハーフか……どれ、姿を見せてみろ』
キャラは横にどいてアースの姿を見せた。
『ふむ……魔獣がそやつの体を突き破るのも時間の問題じゃな……もって1週間って所じゃ』
そんなに短いのか!?と、その場にいた全員がギョッとする。