黒い魔獣-6
「アンタだってアース共々死にたかねえだろ?」
『それは…まあ…なあ…俺はこいつの一部だし……』
一部というか、アースの本能。
頭で考えるより先に動く……つまり、いつもなら考えてみて止める時は止めるのだが、考えずにやっちゃう部分なわけだ。
という事は、国王への暴言もアースの本心であり、激しいセックスもアースの願望なのだ。
まさに……本能のまま動く獣……。
『……あれでも結構我慢してるんだ、もう少し相手してやれ』
他に聞こえないように耳元で囁かれ、キャラは湯気が出るほど真っ赤になる。
まさかそんな事を本人に言われるとは……。
「そ…その事は置いといてだ……死にたくねえなら協力しろよ?とりあえず、人間の方出せ」
キャラは気を引き締めるように両手で頬をペシペシ叩きながら魔獣のアースに言う。
魔獣のアースは肩をすくめると、目を閉じた。
次に目を開けた時には、アースの目は黒に変わっている。
「あ〜…大丈夫。今回の会話は全部覚えてる……」
説明しようとしたキャラの目の前に手を出して言葉を遮ったアースは、決まり悪そうに横を向く。
「別に我慢してねぇから気にすんな」
ボソッと聞こえたセリフにキャラは思わず吹き出した。
「せ…説得力ねえ……」
「うるせぇ」
なんだかじゃれてる2人に国王はケッと不機嫌になり、ベルリアは軽く咳払いする。
「あ……と、とにかく…オーウェン……ファンの守護神も多分魔獣だし、建国当初からいるらしいから色々知ってると思う」
ファンの歴史は長く、建国からと考えると千年は生きている事になる。
「……魔獣って長生きなんだな……じゃなくて、どうやって連絡とるんだよ?」
バレるの覚悟で王城からやるつもりか?と聞くアースにキャラはニヤリとベルリアに目を向ける。
「学長?どうせミヤといつでも連絡取れるようにしてるんでしょう?」
キャラの言葉にベルリアは苦笑して大きめの鏡を引き出しから出した。
「私とミヤの秘密なのになあ……」
「息子の一大事だ。出し惜しみするな」
ベルリアは鏡面に指を滑らせて魔法陣を描く。
「すぐ気づいてくれればいいけど……」
鏡面に描かれた魔法陣は点滅を繰り返している。
4人はアースの作った軽食を食べながら、のんびり待つ事にした。