黒い魔獣-5
「まぁ、これだけわかりゃ十分だな……後は俺次第ってこった」
アースはキャラの頭を掴んで胸に押し付けるとぐりぐりと撫でる。
「泣くなよ」
「泣いてない」
泣きそうだけど……泣いてる場合じゃない。
「まずは、荒ぶる魔獣様を鎮めねぇとなぁ」
自分の意志と関係なく動かれるのは勘弁してもらいたい、とアースはわざとふざけた口調で言う。
「……荒ぶる?…鎮める……」
アースの胸の中でキャラは呟く。
「どうした?」
「なんか……大事な事を忘れてるような……」
キャラは頭を上げてアースの顔をジーッと見る。
あまりに見つめてくるのでなんだか恥ずかしくなってきたのだが、目が離せない。
するとアースの目が金色に変わった。
「あ!……んぅっ」
金色の目を見た瞬間、キャラは何か思い出したが魔獣のアースが唇を重ねてきた。
「んんっ」
キャラはアースをドンドン叩いて離れるように合図する。
『……そんなに見つめられたら我慢できないだろ?』
少し唇を離した魔獣のアースはペロリとキャラの唇を舐めて文句を言う。
「違う違う!思い出した!」
キャラはアースが魔獣になってるのも無視して、両手で顔を挟んでチュウっとおでこにキスした。
『何をだ?』
魔獣のアースも戸惑いを隠せず、キャラを抱こうとしてた両手を固まらせる。
「前から思ってた!金色の目を他でも見た事あるって!」
キャラは嬉しそうに国王に振り向く。
「うちの……ファンの守護神だ!」
会った事あるだろう?とキャラは国王に同意を求める。
「あ?オーウェンか?……ああ!そうだ、確かに金目だ!」
急に話を振られた国王は驚いたが、すぐに思い出した。
確か3年ぐらい前、ファンに友好のため訪問した時紹介された。
その時にキアルリアとしてのキャラにも会ったのだ。
「いや……でも、オーウェンは人間に見えたぞ?」
70歳ぐらいだが、筋肉がしっかりついた体で、金髪と同色の豊かな髭が印象的だった。
「それは外交用。本物はまさに獣だ」
キャラはくるりと魔獣のアースに向き直ると再びキスをする。