黒い魔獣-3
学校に行くと学長室にゼビア国王が来ていた。
「「げ」」
アースとキャラは声を揃えて嫌な顔をする。
国王はいまだにキャラを諦めていないらしく、たまにお忍びで来ては求婚していた。
「よお。休みって聞いてたんだが……もしかして俺に会いに来たんか?」
国王は焦茶色の目でニヤニヤ笑いながらキャラの手を取ると、甲にキスをする。
キャラは嫌な顔をしつつも大人しくそれを受け入れた。
お互い王族なのでその行動はクセみたいなものなのだ。
「何かあったのかい?」
せっかくの休みにわざわざ学校に顔をだすなんて……と、学長、ベルリアが問いかける。
「何かあったどころじゃねぇよ」
いまだにキャラの手をさすっている国王を見ながらアースは頭を掻く。
すると、アースの目がすぅっと金色に変化し、キャラの肩を引いて国王から離した。
『いつまで触ってやがる?この女は貴様が気安く触っていい女じゃねぇぞ』
突然、態度を豹変させたアースはキャラの肩を抱いて低い声で国王に言い放つ。
いつもキャラが絡むとタメ口になるにはなるのだが、いくら何でも『貴様』は無いだろう?と国王とベルリアは驚いてアースをマジマジと見る。
顔をしかめたキャラはアースの顔の真ん前で両手を打ち合わせた。
パンッ
「あ?」
音に驚いたアースは黒い目をパチクリさせる。
「戻った」
「うわっ…またか?」
「まただ」
アースとキャラは今日何度目かもわからないため息をついて、ベルリアの紫色の目を見る。
「来た理由はこれだ……」
記憶は飛ぶし、勝手に喋るしどうにかしてくれ……と、アースは頭を抱える。
「そりゃあ、騎士団の仕事にも支障がでるなぁ……」
説明を聞いた国王はお茶を飲みながら、原因がわかるまで休めと命令を下す。
「すんません。後、さっきの『貴様』だけは取り消します」
「をぃ」
他は取り消さねぇのか、と国王は軽くツッコむ。
「あ〜…目が金色……ねえ……」
何か心当たりのある態度のベルリアは、蜂蜜色の髪を撫でつけてから一冊の本を取り出す。
「この本はね、昔の魔導師が魔獣の事を調べたものなんだけど……ここ、読んで」
ベルリアが指で示した所を、他の3人は覗きこむ。