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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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黒い魔獣-19

「サクさん!」

 騎士団アース隊ナンバー2のサクのもとに来たキャラを、アース隊全員が固唾を飲んで見守る。

「どうだった?!」

 サクの問いかけにキャラは首を横に振って答えた。

「ダメでした。アースはジャガーみたいな外見で馬ぐらいの大きさの獣に変化してます。結界が破られる可能性が高いです。今のうちに住民の避難をお願いします」

 キャラの報告に騎士団全員が深くため息をつくが、すぐに行動を開始する。

「よし!気持ちを切り替えるぞ!住民の避難が優先だ!攻撃してきたら遠慮なく反撃しろ!日頃の恨みをはらすなら今だぞ!!」

 サクの指示に苦笑いしながら敬礼で答えた騎士団らはそれぞれ持ち場に散っていく。
 キャラもその場から離れ、実技場全体が見える校舎の屋上へと向かった。
 そこではエンとアビィが待っている。

「やっほ〜アースってば結界破りそうだよぉ〜」

 エンはキャラに気づくとのんびりと報告した。
 キャラはエン並び、実技場へ素早く目をはしらせる。
 獣となったアースは結界に体当たりしていた。
 結界は体当たりされる度に大きく揺れ、ビシビシとひび割れていく。
 馬鹿力にもほどがある、とキャラは舌打ちした。

「あ、割れるよぉ」

 エンの言葉通りアースの体当たりに負けた結界が、パキンと澄んだ音を立てて割れた。
 割れた所から転がり出たアースはブルブルと体を振って結界の破片を落とす。

「さ、行っちゃおうか〜」

「はい」

 エンはアビィに乗るとキャラに手を貸して自分の前に引き上げた。
 キャラの腰に回されたエンの腕は微かに震えている。
 エンは幼なじみなのでアースと過ごした時間が誰よりも長い。
 多分、キャラ以上に動揺しているだろう。
 キャラがエンの腕を優しく擦ると、ギュウと引き寄せてきた。

「行きましょう」

「了解〜」

 一度、息を吐き出したエンは顔をあげてアビィと意識を共有させる。
 アビィは大きく翼を広げて屋上から飛び上がり、アースに向かった。
 アースは空から来る気配に顔をあげる。

『グウウゥゥゥ……』

 迫るアビィを睨んだアースは唸り声をあげた。

「アース!グロウ!」

 呼びかけるキャラの声に反応する事もなく、体を低くしたアースはいきなりアビィに跳びかかってきた。

『グアオ!!』

「うわぁっ」

 予想以上の跳躍力にエンは慌ててアビィを旋回させるが、爪が翼に引っ掻かる。
 体を捻ったアビィはなんとか地面への激突は避けたが、キャラとエンは投げ出されてしまった。


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