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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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黒い魔獣-20

「がはっ…げほ……」

 キャラを抱いて庇ったエンは背中を強く打ち付けて咳き込む。

「大丈夫ですか?!」

「うん……だ…いいったぁ!!」

 大丈夫と言いかけたエンの言葉は途中から悲鳴に変わり、肩を押さえてうずくまった。

「エンさん?!」

「ア…ビィ…が…」

 エンは痛みをこらえて視線をアビィへ向け、キャラがその視線を追いかけるとアビィとアースが組み合っていた。
 アースはアビィを押さえつけて翼の根元に噛みつき引きちぎろうとしている。
 アビィのほうが倍以上大きいのだが、どんなに暴れても振り切れないようだ。

「痛いってば!!ああ!もう!アースごめん!」

 アビィと感覚を共有しているエンは、あまりの痛さにアースに謝ってから手を前に突き出した。

「焔舞!!」

 エンの手から炎が吹き出し、それに合わせてアビィの口からも炎が吐き出す。

『ギャウッ!!』

 まともに炎を顔面に浴びたアースはたまらず身を翻して逃げた。
 アースが逃げた方向は街の方……キャラはチッと舌打ちするとアビィの元へ走る。

「ゴメン!今はちょっとだけなっ」

 そう言うとアビィの傷付いた翼に手を当てて魔力を注いだ。
 すると見る間に傷が塞がっていった。
 魔獣系の生き物にとってキャラの魔力……異世界のエネルギーは何よりの治療になる。

「先に行きますね」

 ある程度傷が塞がるとキャラはアースを追いかけて行った。

「すぐ行くから〜」

 エンの声が後ろから聞こえたが……あてにしない事にする。

 アースは街中で騎士団に縄をかけられて足止めされていた。
 住民達はすでに避難を終えているようだ。

「学長が来るまで踏ん張れ!!」

 縄1本に5人がかり、それを5本使っていたがアースの動きは完全に止まってはいなかった。

『グアッ』

 首を大きく振って縄を振り千切ったアースは前肢をあげて騎士団に攻撃をしかける。
 勢いに負けた騎士団は反応が遅れた。
 やられる、と騎士団員が身を庇った時、シュンッと空気を切り裂く音と、何かが肉に突き刺さる音がする。

『ガアッ!!』

 空気を切り裂いたのは手の平ほどの大きさの小刀、それが数本アースの肩に刺さっていた。


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