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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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黒い魔獣-16

「誰かを傷つけるような事があったら、躊躇わずにやってほしい」

 『守る』という事に敏感なアースにとって、自分が攻撃する側にはなりたくないのだ。
 勿論、仕事上野盗やら他国の者達を殺したりもしてきているのだが、それは相手も覚悟している事なのでお互い様だ。
 しかし、無抵抗の一般人を傷つけたりするのだけは嫌なのだ。
 目を反らさずに頼むアースにキャラはにっこり笑って答える。

「任せとけ。苦しまないように一思いに殺ってやるよ」

 キャラの答えにアースは苦笑いした。

「なんかわりぃな……」

 もしかしたらとんでもない重荷を背負わせる事になるかもしれないのに、どうせ死ぬなら愛する女の手で……と思うアースは我が儘な自分が嫌になる。

「あんたはオレのものだよ……誰にも殺らせない」

 妖艶とも言える表情で言うキャラは、昨夜子供のように泣いていた女とは思えないほどの色気がある。

「ああ、俺はお前のものだ」

 アースは立ち上がるとキャラの元へ行き、そっと唇を寄せた。
 キャラは軽く背伸びして唇を重ねてすぐ離れる。

「これ以上したらヤりたくなるからダメ」

 ぺしっとおでこを叩かれたアースは、わざとらしく舌打ちして調べものの作業に戻るのだった。


 3日目の朝、異変は訪れた。

「ぐっ?!」

 資料室にいたアースは胸をわしづかみ膝から崩れる。
 体の中がミシミシと鳴っている……変化が始まったのだ。

「アース?!」

 床に倒れそうになったアースをキャラはなんとか抱き止める。

『……き…たぜぇ…アース……気合いの見せ所だ……』

「おぅ…良いとこ見せようぜ…グロウ……キアルリア……実技場まで……頼む」

 実技場にはベルリアがあらかじめ結界の魔法陣をしかけてある。
 キャラは頷くと荒い息使いを繰り返すアースに肩を貸した。

「そこの魔法士!学長に『始まった』って連絡して!」

 資料室から出た所で丁度魔法士に会い、ベルリアへ報告に行ってもらう。
 肩を貸してるアースの体からビキビキと骨の軋む音と感触が伝わってくる。

「ぐぁ……う…ぐうっ」

 内臓が掻き回されるような痛みと、骨が引きちぎられる感触に嫌な汗が流れた。

(くそっ……かっこわりぃ……)

 出来ればこんな情けない姿はキャラに見られたくないのだが、そんな事を言っている場合でもない。
 なんとか実技場に着いた時には体が一回り近く大きくなったような感じになっており、着ている服が所々破けていた。


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