今夜、七星で Yuusuke’s Time <COUNT3>-4
「さ、メシにしよ?」
テーブルに皿を並べ、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注ぐ。
着替えと洗顔を終えた椿さんが席に着くのと大体同時だった。
「すごいね、ユースケくんって料理上手なんだ」
感心したようにテーブルを見渡す。
化粧を落とした素顔は幼く、いくら昨夜と同じ服を着ていても別人のようだった。
「別に、仕方なくってのもあるし。七星仕込み、ってのもある。はい、どうぞ。召し上がれ」
フォークを差し出し、テーブルの隅に冷やしておいたデザートを乗せる。瑞々しい果実と滑らかなカスタードで構成されたトライフルに、椿さんの目は釘付けだ。
「好きでしょ?甘いもん」
一皿だけのトライフルを椿さんの方に寄せ、俺は卵を口に放る。うん。まあまあ旨い。
俺に倣ってフレンチトーストを口に運びながら、椿さんは「美味しい」を繰り返す。
まあ、悪い気はしない。
「昨日のお詫び。これでチャラにして」
笑って言ったら、昨夜を思い出した椿さんが真っ赤になって。
「別に……気にしてないし」
トマトのように火照った頬。
それを見て自分が情けなくなる。甘えてしまった事実を突きつけられているようで。
だから、なのだろうか。
早々に食べ終わった俺は、いつもならさっさとスタジオに行くなり、バイトに行くなり、好きにするのに、なんだか今日は動けなかった。
目の前で美味そうに俺の料理を口に運ぶ姿に、俺の方こそ釘付けになったのかもしれない。
そう気付いた瞬間、なんかあまりのダサさに凹む俺がいた。
情けない、そう自覚せずにはいられなかった。