性奴隷-2
もう川瀬のことは忘れてしまいたい―――。
打ちのめされた理可は、それ以来何かに追い立てられるように何人もの男たちと肌を重ねるようになった。
中には理可を真剣に愛してくれる男や、結婚を申し出る男もいた。
しかし―――川瀬ほど完璧に自分を溺れさせてしまう男には出会えなかった。
結局、理可が川瀬の肉体と離れていられたのは、わずか半年ほどのことだった。
あれほどの仕打ちをされながらどうしてもあきらめきれない川瀬への思いを、理可自身も認めざるを得なかった。
今はバイヤーという立場を利用して、毎月のように自分から川瀬に抱かれに来ている。
「石原――バックルームで話そう」
川瀬の言葉で理可はハッと我にかえった。
「……え…ええ…そうですね」
バックルーム――その言葉に過去の淫靡な情事の記憶が蘇り、これから起こることへの期待で理可は軽い目眩を覚えた。
前を歩く川瀬の背中がひどく官能的に感じられる。
この身体にもう何度抱かれただろうか。
抱かれれば抱かれるほど心と身体を支配する飢餓感と渇望感。
それはまるで危険な薬物の禁断症状のように理可の胸を掻きむしる。
私はあなたなしでは生きられない………
早く……
早く……
私を抱いて……
バックルームに着くやいなや、理可は無言で川瀬の胸にしがみついた。
川瀬の体温を少しでも早く感じたかった。
「……何をそんなにがっついてる」
川瀬は子供のようにすがりついてくる理可の身体を冷静に突き放し、呆れたように見下ろした。
本能を剥き出しにしたメスを見下すようなその冷たい視線に、理可の精神は傷つきながらも激しく欲情する。
もうどう言われようとかまわない――。
理可は自らスーツのジャケットを脱ぎ捨てると、川瀬の首に再びしがみついて無理矢理唇を重ねた。
勢いがつき過ぎて、歯と歯がガチリと音をたててぶつかりあう。
川瀬の気のない反応を少しでも高めようと、理可はありったけのテクニックを駆使して彼の唇を夢中で貪った。
吐息に混じる嗅ぎなれたタバコの匂いが理可の鼻腔を切なくくすぐると、こらえていた感情が堰を切ったように溢れ出した。
「……抱いて…抱いて…下…さい…」
自分の舌を川瀬の舌にヌルリとこすりつけ、じゅわりと溢れ出した二人ぶんの唾液を、一滴残らず吸い上げては飲み下す。
この人の全てが欲しい――。
唇を貪りながら、まだ何の反応もしていない川瀬の股間を夢中でまさぐる。
「まったく……どうしようもない餓鬼だな……」
呆れたようなため息をつきながら、川瀬はまとわりつく理可の腕を鬱陶しそうにほどいた。
胸元の広く開いた、セクシーなキャミソールに包まれた上半身。
軽く勃起した乳頭が、薄い生地を押し上げて小さな突起を形作っている。
「―――今日も下着をつけてないのか」
自分の恥ずかしい格好を改めて川瀬の口から言われて、理可の身体は羞恥に赤く染まった。
「こんなことを私に覚えさせたのは……主任です……」
まだ新入社員の頃、うぶで純情だった理可は、加虐心の強い川瀬の恰好のおもちゃになった。