羞恥の電車通勤-2
メールは川瀬からだった。
『こんな朝早くに何だろ――仕事のトラブルかな――』
ぼんやりした頭でシーツにくるまったまま携帯を開く。
『本日は通常より1時間早く出勤のこと。バッグの中にある書類袋を確認し、必ず対応するように』
「書類袋……?」
いいようのない不安にかられ、あいりはベッドから慌てて身を起こした。
何をさせられるのだろう……。
恐怖感と嫌悪感の陰に、淫靡な期待感で身体が痺れるほどドキドキしている自分がいる。
震える手でベッドサイドに置いてある通勤バッグを開く。
「……あ…あった……」
いつの間に入れられたのか、奥の方に見覚えのない茶封筒が入っている。
「……なんなの……」
恐る恐る袋を広げてみると、そこには女性用のランジェリーらしきものが入っていた。
「……し……下着……?」
純白のブラジャーとパンティ。
レースやフリルがふんだんに施してあるひどくロリータ趣味のデザインだ。
「……これを…着ろってこと……?」
下着姿で全身をじっとりと川瀬に視姦される自分の姿が頭をよぎる。
その状況を想像するだけで身体の芯がカアッと熱くなった。
嫌なはずなのに、そんな妄想をしてしまう自分が情けない。
それにしても……わざわざこんなに手のこんだやり方でこの下着を渡したのには何か川瀬の思惑があるはずだ。
『確認し対応すること』という川瀬のメール……それはつまりこれを身につけて出勤しろという意味に違いない。
しかし、直接的にそれを指示する言葉は書かれていない。
あえてそうすることで川瀬は、あいりがこれを「自分の意思で身につけて来た」という満足が欲しいのだろうか。
「……いやだなぁ……」
戸惑いを感じながら封筒から下着を取り出す。
そしてそれを手にとって広げた瞬間、あいりは事態がそんな単純なものではないことを思い知らされた。
「……なに…これ……」
一見ごく普通に見える純白のブラジャー。
しかしその形をよく見ると、乳房を覆うブラカップの中心が、縦に大きく開くスリットになっている。
つまりブラジャーをしていても乳首が完全に露出してしまう形状になっているのだ。
それは乳房を覆うための下着というよりもむしろ、乳首を強調するためのコスチュームと言ってよかった。
あいりの顔からはすっかり血の気が引いていた。
震える手でパンティを調べてみる。
レースがふんだんにあしらわれた純白のパンティ。
そのデザインはTバックで、クロッチ部分はヴァギナからアヌスまでが完全に露出するように大きな穴があけられている。
更にクリトリスがあたる部分には直径2センチほどの硬いプラスチックの玉が縫い込まれていた。
あまりにも卑猥で下品すぎるその形。
今こうして手に持っていることすら恥ずかしく感じているというのに、これを身につけて外に出ていくなどというのはとても不可能なことに思われた。