陥落-4
「何をしていたか報告しろ――主任命令だ」
川瀬が鋭い口調で問いただす。
「……そ…それは……」
あいりは何も答えることが出来ずうつむいてしまった。
意識しないように努めてはいたが、ついさきほどまで支配人室で受けていた淫靡な行為の余韻が、肉体の端々に微かに残っている。
川瀬にありのままを言うべきなのかどうか―――何が正しい答えなのかあいりにはわからなかった。
「言わないつもりか……」
あくまで冷ややかな声で言いながら、胸と股間を這う両手は緩慢な刺激を絶え間無く与え続けてくる。
核心に触れるか触れないかの焦らすようなタッチに、一度快楽を覚えてしまったあいりの身体は燃えるように疼いていた。
乳首と股間に全身の血液が集まってしまったかのようにそこが充血してドクンドクンと脈打っているのがわかる。
今すぐにでも自分の両手でその部分を激しくまさぐりたいほどあいりは欲していた。
「報告するなら『褒美』をやるが……報告しないなら……それなりの『処分』を与えてやろう……」
川瀬の指先が、凶暴な手つきでストッキングの股間をビリッと引き裂いた。
「……あっ……」
パンティの上から、川瀬の指がぷっくりとした肉厚の土手を揉み始める。
「……ああッ…す…すみません…い…言います……」
あいりは狂おしいほどもどかしい快感に悶えながら、うめき声をあげた。
「処分」が怖いのか、「褒美」が欲しいのか……自分でも頭が混乱している。
今のあいりは、ただ川瀬の言いなりになることだけで精一杯だった。
「………し…支配人に……あ…愛人になれと…言われたんです……」
「……フン……それから?」
川瀬の目が鋭い光を放つ。
「……ソファーに……押し倒され…ました……」
あまりの羞恥にあいりは耳まで真っ赤にしてやっとの思いで言った。
しかし川瀬はまだ追求をやめようとはしない。
「……それで……?」
「……い…嫌だと言ったら……『自分は人事に顔が利くからよく考えたほうがいい』と……」
「……フン…エロジジイが……」
川瀬は、中森のワンパターンの脅し文句を鼻で笑いながらも、あいりがその誘いを断ったという事実に軽い安堵を感じていた。