新入社員歓迎会-6
「おぉ。感度いいじゃないか……そそられるねぇ」
思わず漏れてしまったあいりの色っぽい声に男たちは大喜びしている。
「耳が性感帯なのかなぁ?川瀬くん、上司としてどう思う?」
「さぁ。私にはわかりません。ご自身でお確かめになりますか?」
本当はここにいる誰よりもあいりの性感帯を知りつくしている川瀬は、ニヤニヤしながらとぼけている。
「どっちの耳が感度がいいか調べようじゃないか。川瀬くんも協力しなさい」
中森は卑猥な笑いを浮かべながら川瀬を促した。
「……支配人命令ならば仕方ありませんね……」
二人は目配せをすると、あいりの身体をソファーに押さえつけて、両側から耳を舐めまわし始めた。
「ああっ……やめ…やめてくださいっ……あっ……ああっ……」
あいりが身をよじらせて懇願する。
アルコール混じりの吐息が両耳にまとわり付き、中年男に激しく強くそこを愛撫されて、あいりは気絶しそうなほどの嫌悪感に襲われた。
「……いやっ……た…助けて……」
「……あいつら…っ……!」
我慢の限界を越え、三田村は再び立ち上がっていた。
怒りのあまり今にも中森に飛び掛かかっていきそうになるところを、岡本に強く胸ぐらをつかまれて力一杯引き戻された。
「主任!離してくださいっ!……もう我慢できへんわ!」
「やめとけって!」
三田村を思いきり怒鳴りつけた岡本の顔は、もう笑っていなかった。
「……岡本主任……」
「……もし今お前が支配人を止めに行ってみろ。お前も…藤本も…この会社で将来ないぞ」
岡本は声のトーンを落とし、鋭い目つきで諭すように言った。
「……どういう…意味ですか」
「中森のオッサン……人事に強力なコネがあるんだ。だから新人の一人や二人潰すのなんか簡単なんだよ。……藤本のためを思うなら……今日は我慢しろ」
「……藤本の…ため……」
今目の前であんなに苦しんでいる状況から助け出さないことが、本当にあいりのためだと言えるのだろうか。
しかし、今自分が動いたためにあいりがTデパートを辞めなければならなくなったら、それこそ取り返しがつかない。
自分がどう動くべきなのか、新入社員の三田村には判断することができなかった。
「……俺も主任として…入社早々カワイイ部下を潰すわけにはいかねぇんだよ……」
岡本の目は真剣だった。