恥辱の新入社員研修-4
「さっそくだが藤本……合宿でうちの身だしなみ基準は教わってきただろう?」
川瀬は急に大袈裟に表情をくもらせると、胸ポケットから社員手帳を取り出し、パラパラと広げ始めた。
「……はい。基準通りにしてきたつもりなんですが……」
違反しているつもりなど全くなかったあいりは、川瀬の質問の真意がわからず不安になっている。
「いいか……デパートというのはそこいらの量販店とは違う。髪の毛一本から爪の先まで、身だしなみには特に厳しいんだ。わかってると思うが、学生のバイト気分じゃ困るんだ。部下の失敗は上司の責任になる。売り場に出る前に完璧に直させてもらうからな」
川瀬はわざと渋い顔を作って冷たい口調で言い放った。
「は、はい……すみません……」
あいりはすっかり萎縮してうつむいている。
これで第一段階は成功だ。
新入社員というのは実に手間がかからない。
「じゃあ……まずブラウスが基準に合っているかどうかチェックするから、ちょっとベストを脱いで」
川瀬が事務的な冷たい声で命じた。
あいりは何の疑いもなくベストのボタンをはずす。
押さえつけられていた胸のラインがあらわになった。