「超合体浪花ロボ・ツウテンカイザー」-5
「おい、こら、何をやっとるんやっ!!BKO砲はどないしたんやっ!」
「あ、いや、そのぉ…BKOは」
十文字博士の問い掛けにひよこは言葉を詰まらせ、代わりに恭子がおずおずと答える。
「あのぉ、BKO砲はエネルギー切れで使えないんです」
「エ、エネルギー切れって…。こんな肝心な時にほんましょうもない。大体、ひよこは昔からそうやった。仰山もろたお年玉でも貯金もせんとすぐにつこてしまうし…」
「お、お父ちゃん、何もこんな時にそんな話せんでも…」
「計画性がないというか、行き当たりばったりというか、性格はがさつやし、胸は小さいし…」
「なんやてぇえっ!!胸は関係ないやろが、胸はっ!!大体、うちがお年玉を貯金せんようになったんは、小学校三年の時まで貯めてたお年玉を、お父ちゃんが全部つこうてしもたからやろがっ!!娘のお年玉使い込むなんて、ほんま、どんな親やねん!?」
「あ、あれはやな…。子供を育てるには、色々と物が要りようで…」
「嘘、言いなっ!うちの給食費、競馬で全部すってしもて、それでこっそり私の貯金を下ろしたんやて、お母ちゃん、言うとったわっ!!」
「あ、あの阿呆、余計な事を…あ、いや、そのぉ…。何もこんな時にそんな古い事蒸し返さんでも…」
「お父ちゃんが先に言うたんやろがっ!!!」
娘の前では、世界的なロボット工学博士も形無しである。
そこへ、恭子が切迫した事態に耐え切れず、口を挟む。
「まあまあ、ひよこも博士も落ち着いて。それより、今はこのエイリアンをどうにかしないと…」
「む、うむ。恭子ちゃんの言う通りや。今はお年玉よりエイリアンの事を考えい」
「覚えとれよ、おっさん。貧乳、言うたんわ一生忘れんからな…」
不承不承口を閉じる十文字親子。しかし、BKO砲が使えない事態に変わりはない。
「あの、十文字博士は今、オリュンポス山の観測センターにいるんですよね?私、地下の氷を溶かした後、サテライトシステムは火星のエネルギー施設転用が考えられていたと、聞いたことがあるんですが、それをツウテンカイザーに使えませんか?」
恭子の提案に、十文字博士の愁眉が開かれた。
「成る程、それは気が付けへんかった。幸い人のおらへんかったマイクロウェーブ衛星は無傷や。人工衛星のシステム変更はそんなに時間掛からへんし、いけるかも…。さすが恭子ちゃん。貧乳のひよこには考えつかへん事やわ」
「喧嘩売っとんのか、くそ親父ぃっ!!!」
「ううむ、そやけど問題があるわ。人工衛星がツウテンカイザーを捕捉している間、ツウテンカイザーは無防備になってしまう」
「それやったら、重力障壁の中でじっとしてたらええやんか」
「何言うとるんや、重力障壁で衛星の捕捉システムが使えんようになるやろが…。ほんの三分、敵の攻撃を受けんかったらええんやけど…」
十文字博士は再び考え込んだ。ツウテンカイザーの装甲は火星人の攻撃を受けてもダメージを受けないが、操縦しているひよこや恭子は耐えられない可能性がある。
そこへ、通信を聞いていた王鷹が話に割り込んできた。
「それなら、俺が連中をツウテンカイザーに近付けないよう踏ん張ってやる。なに、たったの三分だろ」
王鷹は努めて気楽に告げるが、戦闘機一機で群がるエイリアンを食い止めるにはかなり無理があった。
「何言うてんのや、王鷹の兄ちゃん。そんな戦闘機で、これだけのエイリアンを食い止められるわけないやろ!」
ひよこの言葉に、王鷹は笑顔で応じる。
「これでも、金玉は付いているもんでね。それに、システムの改造が済むまで、ツウテンカイザーと俺でなるべく敵を叩けば何とかなるだろう」
「むう、今はそれしか方法がないか…」
「な、何言うてんのや、お父ちゃんまでっ!」
「そうですよ!敵はいくらでも湧いて出てくるんですよ!」
「他に方法があるのかっ!?座して死を待つより、戦って死ねと言ったのはどこのどいつだっ!!四の五の言ってねぇで、今は少しでも敵を叩き落せっ!!」
王鷹の一喝に、ひよこと恭子は腹をくくった。十文字博士もそれ以上は何も言わず、コンソールパネルに指を走らせてシステムの改造を急ぐ。
「ああ、もうこうなったらやけくそやっ!!恭子、目についた敵を片っ端から叩き落すでっ!!」
「勿論、そのつもり!!」
ひよこと恭子は王鷹の意気に感じ、奮い立った。そして、ツウテンカイザーも二人の心に呼応するかのように、猛然と敵を叩き落す。
『ドオォオリャァアアアアアッ!!』
目の前のムカデエイリアンを、裂帛の気合で一刀両断にずると、蝿のように群がるザリガニエイリアンを次々叩き落していく。
王鷹のステルスホークもツウテンカイザーに負けじとエイリアンを撃破していき、やがて、ツウテンカイザーの周りをエイリアンが攻めあぐねてぽっかりと穴があく。
その瞬間を狙い済ましたように十文字博士からの連絡が入る。