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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英-48

 家に着いたのは11時過ぎであった。
「ただいまー…って、寝てるだろうな、二人とも」
 もし寝ていなかったら、俺は踵を返すつもりだ。
『うわ!! 凄いアルコール臭がしますよ!? 何事ですか!?』
 俺の手の中でヘクセンが喚く。
「気にしないでくれ…そうだ、この部屋の中にいる人間が寝てるかどうか解るか?」
 俺は、居間への扉の前で立ち止まり、ヘクセンに聞いた。
『ええと…中にいるのは…二人で、どちらも脳波レベルは睡眠状態ですよ!! って、わあ、役に立ってます!? 私、役に立ってますか!? 弟様!!』
「ああ、役に立ってるから、騒がないでくれ…マジで…」
 酒の入ったあの二人が起きてしまったら…俺にとっては地獄が展開される事になる。
「暫く、黙っててくれよ…頼むから」
 キィ…と静かに扉を開き、居間へと入る。
 居間には、本当に尋常じゃ無い位のアルコールの匂いが充満していた。
「う…匂いだけで酔いそうだ…」
 忍び足で、床に倒れている二人の横を通り過ぎる。
「起きるなよ…」
 なんとか自分の部屋への扉の前に辿り着く。そして、ゆっくりと扉を開き部屋の中へと入り、後ろ手で扉を閉めてようやく、俺は安堵の溜息を漏らした。
「はあ、何とかなったな…」
『いやあ!! 黙っているのは疲れましたよ!! ホント!!』
 喋っているほうが疲れると思うのだが…やはり普通じゃ無い。
「俺も、疲れたな…寝よう」
 ポイっとヘクセンをベッドに投げ捨て、俺もベッドに倒れこむ。
『きゃあ!! お、弟様!? そんな、いきなり、心の準備がぁ!!』
「何がだよ…」
『わ、私コレでも初めてなんで…出来れば優しくしてくださいませ!! ああ、弟様!!』
 何を勘違いしてるのかは知らないが、棒相手に何をしろと言うのか。
「うるさい…眠いんだから…黙れ…」
『ええ!? 私の純潔には興味無しですか!? ちょっと、ショック…』
 というか、純潔って…棒から何を奪えと…?
 などと、くだらない事を考えているうちに、俺の意識は闇に沈んでいった。


 翌日。日曜日。
 俺は傍らで騒ぐヘクセンの声で目を覚ました…はずだった。
「起きてください!! もうお昼ですよ!? お昼!! 怠惰な生活をしていると、マスターのような冷たい人間になっちゃいますよ!?」
 何かがオカシイ…いや、オカシイのは俺の頭か? それとも、この、目の前で騒いでいる見知らぬ女か…?
「あんた誰…?」
 俺の目の前で騒いでいたのは、きっちりとしたメイド服を着こなした知らないお姉さんだった。
「ああ、そんな!! 弟様!! いくら寝ぼけていても、いきなりソレは酷い!! ヘクセンですよ!! 忘れちゃったんですか!?」
 …ヘクセン!? そんな馬鹿な…いや、確かに言われてみれば声は一緒だが…何故、棒がメイドに…?
「何があった…?」
「ええとですね、明朝5時前ごろに琴葉様が部屋に入ってきまして…弟様の隣で幸せにスリープモードに入っていた私を鷲づかみ、そのまま連れて行かれた先で、こんな素敵な身体を頂きました!!」
 いや、話が飛びすぎだろ。
「ま、まあ、いいや…姉さんの考えてる事なんか、俺には解りっこないから…それより、悠樹…居間で姉さんと寝てた奴はどうしたんだ? 帰ったのか?」
 正直、帰っていて欲しいのだが…。
「ああ!! あのお客様ですか!? 今、キッチンで弟様のために食事を作ってますよ? いやぁん!! 彼女ですか!? 弟様の幸せ者!! この!!」
 今…こいつは何て言った? よりにもよって、悠樹が、料理を、作っている…?
「今すぐやめさせてこい!! いや、俺がやめさせる!!」
 俺はベッドから跳ね起きて、キッチンで毒を生み出しつつある悠樹を止めるために走った。


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