官能の城(5)-1
(20)
リチャードとジョゼフは顔を見合わせ、早足でその下僕に近づき言いました。
「僕たちをそこに連れていって下さい!何とかその人達を助けたいのです」
「え・・・貴方達が?」
その男は、この若い二人の青年を見て少し驚いたような顔をしていました。
「そうです、こう見えても僕たちは剣術の心得がありますので心配ありません」
「あ、はいそうですか、分かりました、
先程お屋敷に数人の賊が押し掛け、奥様のお金や宝石等を奪った後、
その上に、奥様とお嬢様を監禁して、乱暴しようとしているようなのです、
あぁ、なんと恐ろしい・・どうか奥様達を何とか助けてください!」
「それは大変です、それで賊の人数はどの位ですか?」
「はい、よくは分かりませんが、
今は多分、5〜6人が残って、他の賊達は別のお屋敷を荒そうと出ていきました」
「それで、その親子以外の人達はどうしたんですか?」
「男の召使いは何人もいたのですが、賊達に恐れをなして、奥様達を置いて、あぁ・・
何処かへ逃げていってしまいました、ううぅ・・」
男は恐怖の余り言葉が詰まり、泣いていました。
「そうですか、分かりました、では僕たちをそこ連れていって下さい、
さあ・・・そこへ行こうぜ、ジョゼフ!」
「わかった!ルイス、早くその人達を助けないと」
「そうだね、行こう!」
二人の若者は逡巡している兵士達を横目に見て、
素早くその下僕の後を追っていました。
その頃、
下僕が言っていたその屋敷の中では、何人かの賊により荒らされていました。
大きなその屋敷は公爵の家で、
時々城で催される仮面舞踏会によく母娘で現れては彼女達はその富と名声で鳴らし、
たぐいまれなる美貌を武器にして、様々な性の享楽を楽しんでいたのです。
美人の母とその娘は、享楽に心と身体を任せるような奔放な母と娘でしたので、
そういう噂が賊の好奇心を誘ったのかも知れません。
しかし、家の主の公爵は女をつくり、他の屋敷でその女を囲っているようで、
屋敷にいないことが多いようです。
その頃、この国の上流社会では彼等だけでなく、
他のこのような階級の人達も同じようなものなのです。
富と権力、そして退廃した退屈な時間を、こうした性の欲望の饗宴を頻繁に行い、
一時の慰めとして興じている人達が少なくないのです。
それは男も、そして女も同じなのです。