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ARMORED CORE HIS ANSWER
【二次創作 その他小説】

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人類種の天敵(下)-1

 コンデンサのエネルギー充填が完了する。おそらくは彼も、ライフルのリロードを完了させている頃だろう。仕切り直しということだ。レーダーで彼の位置は把握できている。

「終わりにしよう。次で決める」

 シリエジオの背部装甲が展開し、オーバード・ブースタのチャージが開始される。ジェネレータとプライマルアーマーからコジマ粒子を吸収。チャージ終了と同時に、プラズマと化したコジマ粒子の噴射によって機体は急加速する。体に凄まじいGを感じながら、セレンは突撃する。アルテリア・カーパルスの外壁を時速1000キロで飛び越えると、海上に浮かぶ彼を視界に捉える。インテリオル製のレーザーライフルとレールガンを連射。だが、赤い噴射炎を残してヴィルトゥはセレンの眼前から消え去った。シリエジオはオーバード・ブースを切ると海面に降下する。プライマルアーマーの干渉で海面にクレーターが穿たれると同時に、左から徹甲弾の雨。即座に右、前とクイックブーストを連続で行い、クイックターンでヴィルトゥを捉える。レーダーに紫色のマーク。シリエジオの前方にミサイルが接近していたのだ。ヴィルトゥのロックオンを解除し、ミサイルに対してレーザーライフルを連射。一つの赤い光がミサイルを捉え、その場で爆発する。だがそのときにはヴィルトゥはまたしてもロックオン範囲から消え去っている。

(素晴らしい戦い方だ。機動力で敵の側面を取り続ける。……だが--)

 再び左から徹甲弾が降り注ぎ、シリエジオの装甲は鈍い音を立てて形を変えていく。だがセレンは落ち着いていた。損害報告には目もくれず、彼女は左にいるヴィルトゥに対して、右方向に向けてクイックターンを行った。プラズマの噴射とともに、シリエジオはヴィルトゥに背を向ける。そしてシリエジオは、正面の誰もいない空中に向けてレーザーライフルとレールガンを構えた。

「側面を取った後に交差して、右を向いた敵の後ろを取る……お前の癖だったな」

 セレンがつぶやき終わる頃には、シリエジオが右に旋回するのと同時に、シリエジオの上を通り越した状態のヴィルトゥに対するロックオンが終了していた。セレンは引き金を引く。

 レールガンがヴィルトゥのPAを突き破り、右腕に直撃する。レーザーライフルはコアのプライマルアーマー整波装置に直撃し、それを消し飛ばした。セレンはこの好機を逃さず、一気に攻撃を畳みかける。レールガンとレーザーライフルの発射の度にコンデンサのエネルギーは食いつぶされていく。ヴィルトゥは反転し、シリエジオにライフルで応戦してくきた。だが、レールガンがヴィルトゥの右肘関節に直撃し、アクチュエータを損傷したヴィルトゥの右腕はあらぬ方向にライフルを連射し始めた。そしてもう一つのBFF製のライフルにレーザーライフルが直撃し、銃口が消し飛ぶ。もうライフルは使えないだろう。だが最後に一発放たれたライフルの弾丸が、シリエジオの頭部のメインカメラに直撃した。PAによる減衰で破壊はされなかったが、機体と繋がるセレンは頭部にダメージを受け一瞬行動が停止する。

 「メインカメラの損傷は軽微」その報告が出て彼女の視界が回復した時には、シリエジオの前方にミサイルが迫っていた。セレンに鳥肌が立つ。煙の尾を引きながら、ゆっくりと獲物を見据えてミサイルが前進している。だが彼女は、あえてミサイルに対して前進した。並のリンクスなら、ここでクイックブーストでミサイルから離れようとして、結局は全てのミサイルの直撃を受けただろう。そう、「全て」の。

 前進したシリエジオの目前で、ヴィルトゥのミサイル、SALINE05は分裂した。8本の小型ミサイルが、シリエジオを覆い尽くす。だが旋回半径の内側に入ったシリエジオを捕らえることはできず、そのまま後方へと進んでいった。下手に離れるよりも、近づいた方が回避しやすいのがミサイルなのだ。だが、再びシリエジオの正面に接近するものがあった。ヴィルトゥである。その瞬間、セレンは自らが通常ブーストで「前進させられたこと」を理解した。

「クソッ! ミサイルは誘導か」

 ヴィルトゥは、左腕に格納していたブレードを装備している。セレンが右方向にクイックブーストをするより速く、ヴィルトゥはシリエジオに肉薄していた。赤い刃が最強の盾であるはずのプライマルアーマーを容易に切り裂き、セレンの搭乗している曲線で設計されているコアをも切り裂いた。ほぼ密着状態からの斬撃で、コアは深く切り裂かれる。火花と、爆発。シリエジオは重力に任せて海面に落下する。プライマルアーマーを失った巨人を、海面は先程とは別物のようにすぐさま飲み込んでいく。まだ生きている統合制御体が、リンクスの脱出を推奨している。かろうじて機体と繋がったままであるため、自分の体を直接セレンは見ることができなかったが、彼女はもはや脱出する努力が無意味であることを悟っていた。断絶されかけているAMSで、海面からなんとか頭上の彼を視界に捉える。

「お前は、まだ憎んでいるのか? ……ただ殺すだけでは、どうにもできないだろうに」

 力が急速に抜けていき、セレンの声はかすれていた。この問いかけは彼に届いただろうか? シリエジオは急速に海中に沈んでいく。セレンは、先ほどまでやかましくアラート音を鳴らしていた統合制御体からの脱出警報が段々と遠のいていくのを感じていた。彼は、セレンを静かに見下ろしていた。

「……お前は、私のものだ。そうだろう……?」

 最後まで言い終わらないうちに、シリエジオは完全に海中に姿を消し、セレンの声も聞こえなくなった。

 ヴィルトゥは、しばらくセレンを飲み込んだ海面を見下ろしていたが、やがて何処かへと消えていった。

 「人類種の天敵」と呼ばれる人間が誕生した瞬間であった。


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