やっぱすっきゃねん!VP-12
「どうでしょう?永井さんに葛城さん。その全国大会の件で、ちょっとお話があるのですが」
「分かりました!」
永井には、白石の思いが解った。青葉中が全国大会出場となると、藤野一哉が全国制覇して以来、13年ぶりだ。
故に、学校としてのバックアップの在り方を、我々に相談するつもりなのだろうと。
喜び勇んで、永井は校長室の入口をくぐった。白石がソファーに手を向け、2人に座るよう促した。
「失礼します」
永井と葛城はとなり同士に座った。白石は対面のアームチェアに腰かける。
「今から話す事は、他言無用にお願いしますよ」
その表情には、先ほどまでの明るさは無かった。
「先ず、結論から申しますが…」
重苦しい雰囲気の中で語る白石の眼は、哀しそうだった。
夕方、郊外にある総合病院の屋上。藤野一哉は、施設点検に勤しんでいた。
ポケットの携帯が着信を知らせた。一哉が出ると、相手は永井だった。
「これは永井さん、今日も勝ったそうですね!」
事前に選手逹から連絡は入っていた。弾んだ声で云うと、
「藤野さん。わたしは今日ほど、無力感を感じた事がありません」
聞こえてきたのは、力無い涙声だった。
「どうしたんです?永井さん」
「子供逹は一生懸命なのに、なんで学校側の都合で…」
永井は、校長室で交わした白石との言葉を回想する。
「もし、全国大会に進出が決まっても、辞退してくれないでしょうか?」
信じられない言葉。永井も葛城も、茫然となった。
「…わけを、訳を教えて下さい」
ようやく永井が絞り出した。
「予算が賄えないんです」
「そんな!こんな時のために予備費を計上してるはずでしょう」
葛城が割って入る。白石が頷いた。
「確かに、先生方の云う通りです。わたしとしては十分な予算を計上したはずだったんでしたが、2つの問題が持ち上がったのです」
「なんです?2つって」
「1つは、野球部以外の部活動、サッカー部の躍進です。予想以上に運営費がかかっています」
そこまで云って、白石は躊躇った。そして、ひと言々を確かめるように語り出した。