投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 470 やっぱすっきゃねん! 472 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VP-11

 準々決勝第2試合。青葉中は3-1で勝利した。

 先発の稲森は、河浦中を8回まで1点に抑え、最後は橋本で締めくくった。
 しかし、攻撃では相手のエラー絡みの得点ばかりで、タイムリーは乾の1本だけだった。

 チームとしては消化不良な試合。当然、解散後は部室での反省会となった。

「先ずは初回の乾からだ。何故、初球から打った?」

 キャプテン達也がチェックリストに目を通す。チェックリストには、出場メンバー全員が自由に書き込める──気づいたミスを。

「…そりゃ、その…なんだ」

 バツの悪そうな乾。

「つまり、いい球だから手を出したってんだろ?」
「…ああ、そうだよ。でも、ヒットになったからいいじゃないか」
「そういう事じゃないだろ」

 達也の醒めた眼が乾に飛んだ。

「お前も初めて1番任されたわけじゃないだろ。初回は球数放らせて、相手の投球を見極めるのがセオリーのはずだろ?」

 厳しい議論が目の前で続く中、佳代は別の事を考えていた。

 試合中に見せた稲森の言葉が、棘のように刺さる。昨日までは、周りの暖かさに嬉しくなったが、今日、まのあたりにした状況には戸惑いを覚えていたのだ。
 連投をも辞さない2人のエース。チームの流れは、確実に厳しい方を向いている。それは、藤野が進めてきた指導方針とは、明らかに違う。

(どうしたらいいんだろう、わたし…)

 佳代は思わず、ため息を吐いた。





 選手逹が部室中に隠っている同時刻。永井と葛城は、いつもの場所で互いを労っていた。

「失礼しますよ」

 扉が開いて入って来たのは、校長の白石だった。

「これは校長!」

 2人は、慌てて立ち上がった。白石が彼らの前に現れるなぞ、ついぞ、無かったからだ。

「今日も勝利されたそうですね永井さん。おめでとうございます」

 白石が頭を下げた。永井も葛城も驚く──これも、初めての事だったからだ。

「いよいよ全国大会が見えて来ましたね!」

 白石の嬉しそうな話し出しに、2人の気持ちが緩んだ。

「子供逹の努力の賜物です」
「そうでしょう、そうでしょう」

 永井の言葉に、白石は何度も頷いた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 470 やっぱすっきゃねん! 472 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前