今のままで...-1
私は失恋した....失恋というより....長い片思いに終止符がうたれたというほうがあっている....
一学期の最終日私はいつものように和哉(木下和哉・きのしたかずや)に話しかけようとした。
「ネェ和哉!今日....」
声を掛けたが和哉の視線は私の方に向けられなかった。和哉の視線を追いかけると、そこには一人の少女がいた。その少女は和哉の方を見て、右手を軽く上げて何か話しかけようとしたが、あきらめて帰ろうとした時、
「待って!美咲!」
和哉が声をかけた。
「えっ....」
驚いたような顔で振り返った少女に、
「一緒に帰ろう!」
そう言った和哉に、
「うん.....」
少女は和哉に幸せそうな笑顔を見せた。
(えっ.....なんで....和哉と北原さんが.....)
私の頭の中は混乱していた。その少女の名前は北原美咲(きたはらみさき)....クラスでもあまり目立たない存在の少女だった.....
「なんで北原さんなの?」
私はファミレスでいくつものスイーツを並べて、ブツブツ文句を言っていた。
「あれっ?理彩!ダイエットしてるんじゃなかったの?」
そう言いながら直輝が私の前に座った。私の名前は仲谷理彩(なかやりさ)、そして私の前に座ったのは氏家直輝(うじいえなおき)、直輝は私の幼なじみで去年までの十年間ずっと同じクラスだった。
「ダイエット?そんなの意味ないからもうやめた!」
「やめたって....失恋でもした?」
そんな直輝の言葉に、私は時間を止めてしまった。
「えっ....マジ....」
驚く直輝に、私は頷くしかなかった。
「和哉はお前の事が好きなんじゃなかったの?」
「私に聞かれても知らないわよ!」
私はムッとして答えた。
「期待を持たせるような事を言ったあんたも悪いんだからね!!」
「悪い悪い....和哉はお前の事を....冗談じゃなくそう思っていたんだけどなぁ.....」
直輝はバツが悪そうに頭をかいていた。
「和哉はお前の事....なんてあんたが言うから期待しちゃったじゃないの...」
「ゴメン....本当にゴメン....」
直輝は両手を合わせ頭を下げた。
「去年の冬休みに、うちのクラスに顔を出すのは好きな子が居るからじゃないのか?なんて冗談で言ったら、実はそうなんだって言うから...」
「なんでそれが私なのよ!」
「いやぁ....今年のクラス替えで同じクラスになったって喜んでいたんで、てっきり....」
「だからそれがなんで私なのよ!」
「去年俺らのクラスで和哉が話ししてた女の子のはお前だけだろ?」
「それはそうだけど....」
私は黙り込んでしまった。和哉とは中学から一緒になり、同じクラスになったのは三年生の時だけだが、直輝と和哉は部活が一緒だったので一年生の時から仲が良かった。その縁で私とも親しくなった。
「で...和哉の彼女って誰なの?」
「えっ?あんた知らないの?」
私は驚いて直輝の顔を見た。
「知らないから聞いてるんだけど....」
「あんた達...親友じゃなかったの?」そう言おうとしてやめた。男の子同士で「俺彼女が出来た」ってわざわざ言わないのかも?そう思ったからだった。
「北原美咲って子!」
私は少しぶっきらぼうに答えた。
「北原...美咲?」
直輝は少し考えて、
「あぁ...確かにいたなぁ...」
直輝はやっと思い出したようだった。