今のままで...-3
「木下君!何やってるの?去年から北原さんの事好きだったんでしょう?」
「そうそう!」
直輝も同意してきた。
「和哉さんそうなの?」
「えっ?北原さん知らなかったの?」
私が美咲の顔を見ると、美咲も私の顔を見て、
「うん....」
美咲は頷いた。私は和哉を見て、
「木下君!何やってるの!!女の子から告らせるなんて!ネェ北原さん?」
再び美咲の顔を見ると、
「えっ...それは....」
困ったような顔をしていた。
「あっそうだ!これ食べて!」
私は美咲にアップルパイを渡した。
「えっ?」
驚いている美咲に、
「遠慮しないで食べて!おいしいよ!他のも自由に食べてね!」
私が笑顔を見せると、
「あ....ありがとう...」
戸惑ったような笑顔で答えた。私は和哉のほうに向き直って、
「木下君!.....」
私の言葉を遮るように、
「ちょっと待て!そういう事は二人きりの時に...」
「木下君!」
「俺だって告ろうと思ってたんだよ!でも先を越されたというか....」
すると美咲が小さい声で話し始めた。
「私は自分を変えたかったから.....」
「えっ?」
私は美咲の顔を見た。
「私は何事にも引っ込み思案で一歩前に踏み出せないでいたの....そんな自分を変えたくて.....」
「だからって...」
「実は....真弓から、和哉さんには彼女がいるらしいよって聞いた時、諦めようと思ったんだけど....」
美咲は恥ずかしそうに俯いていた。
「どうせ失恋するなら思い切ってフラれようと...」
「北原さん勇気あるなぁ。」
直輝が声を出した。私も同じ思いだった。
「好きな人に告るって事はとっても勇気が必要で....それが出来れば....自分も変われるんじゃないかと....」
「やっぱり勇気あるよ!北原さん!私なんか自分から告るなんて絶対出来ないもの....フラれるとわかってて...なんて絶対....」
「直接フラれないとあきらめられなかったから....」
「この幸せ者め!」
直輝が和哉の首に腕を巻き付け軽く締めた。普通なら言えないような事を言ったせいなのか、美咲は私達と前からの友達のように話してくれるようになった。
「あっ!ゴメン!」
話に夢中になっていると美咲の携帯が鳴った。美咲は着信番号を確認すると、
「お姉ちゃんと約束してるから....ゴメンね!!」
そう言うと財布から千円札を取り出してテーブルの上に置いて席を離れて行った。
「北原さんこれ!」
私は美咲が置いた千円札を手にして美咲に見せた。美咲は振り返ると
「ゴメン足りない分は今度奢るから!」
そう言って走って行った。
「いい子だな!和哉!」
「ああ」
直輝の言葉に和哉は嬉しそうに頷いた。
「この....」
直輝が和哉の首に腕を回そうとした時
「俺も帰るわ!」
そう言って帰って行った。和哉が帰った後で
「前言撤回....性格も和哉のタイプだった....」
直輝がポツリと漏らした。正直....私は美咲にはかなわない....そう思った....
夏休みにも4人で何度か遊んだ。夏休みの宿題も4人で片付けた。と言っても私は3人のを写しただけだった。英語と国語は美咲のを理数系は直輝のを古文・漢文と社会科系は和哉のを写した。
「お前って奴は....」
直輝は呆れたように言ったが、私は
「写すのも大変なのよ!」
って笑っていた。