記憶-4
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頭がグラグラする……何かとてつもなく嫌な事があったような気がするが……何だっただろうか?
「……う……」
「姫様!!」
体を起こそうとしたらあちこち痛んだので断念した。
「姫様、寝ていて下さい。熱が高いのですから……」
熱……頭がグラグラするのとあちこち痛いのと関係あるのだろうか……。
「……ミヤ?」
声がしたほうに目を向けると、巫女長のミヤが鳶色の瞳で見返してくる。
「はい。ご気分はいかがでございますか?どこかおかしな所はございませんか?」
大して変わらない年齢に見えるが、50歳を越えているらしい彼女は長い黒髪を揺らし、落ち着いた声音で聞いてきた。
「気分……は……悪い…頭グラグラする……後、体中痛いんだけど……何があったんだっけ?」
問いかけにミヤが顔を曇らせたので、これ以上なんとなく聞けなくなった。
トントン
ノックの音にミヤが立ち上がり入り口へ向かい、訪れた人物と話をした後、戻ってきた。
「あの、ギルフォード様がお会いになりたいと……」
「ギルフォード兄様が?」
わざわざ見舞いに来てくれたのだろうか?
「目が覚めたばかりですし、お断りしましょうか?」
「いや、大丈夫」
ミヤは少し困った顔をしてから、起き上がる手助けをしてくれた。
背中にクッションを当てて、なんとか見苦しくないないように体裁を整える。
「キアルリア、気が付いて良かった……大丈夫かい?」
「見苦しくてすみません…なんだかご心配かけてしまったようで……あの……何があったのでしょうか?」
驚いた顔の兄がミヤに顔を向けると、ミヤが顔を伏せた。
「?」
何があったか2人はわかっているようだが、どうやら自分には言いたくないようだ。
「いや……今はいい…ゆっくり休みなさい」
「はぁ……」
ベットサイドの椅子に腰掛けた兄は心配そうに顔を覗いてきた。
この兄も自分と同じ緑色の目。
しかし、柔らかい感じがするラインハルト兄様とは違い、どちらかというと鋭いイメージのある色だ。
同じ色でもここまで違うものか……と考え、はて?いつラインハルト兄様の目を見たんだったか?と思った時……一気に記憶が戻ってきた。