最終章 白昼夢-5
「奥さん、またイッちゃったの?さっきからイキっぱなしだね」
朦朧とした頭の中に男の声が響く。それは、遠い所から聞こえてくるようなのに、耳元で響いている。
「大人しそうな顔して、こんなにスケベだなんて、すっごい興奮したよ」
また耳元で声が響いた。自分も何かを答えているようだが、まるで夢の中にいるようで何を言っているのかよく分からない。
少しずつ、少しずつ、夢から覚めるように由紀の意識が覚醒してきた。
「じゃあ、またね」
男の声で由紀の目が覚めた。
声はイヤホンから聞こえていた。
辺りを見回す由紀。いつもと変わらないリビング、目の前にはパソコンが置かれ、男性会員が退室したことを知らせるメッセージが表示されていた。
由紀は夢から覚めたような気分だった。
それは、ひどく悪い夢のようでもあり、とても快美な夢のようでもあった。
白昼夢……
由紀の心の奥に眠る「何か」が引き起こしたのか……
「はあ〜……」
由紀は、深く息を吐き、まだ余韻の残る気だるい身体を起こした。時計を見上げると11時半になろうとしていた。
スーパーに買い物に行かなくてはと思い、乱れた服装と髪を整え、仕度をする。
玄関でバックを肩に掛け、サンダルに足を通した。
その時……
インターホンが鳴った。
ピンポ〜ン……
【完】