続・せみしぐれ〜color〜(後編)-19
「はぁ…ん…!」
口を塞ぐことを止めて、下唇を噛み締めることも止めたら、相模くんの優しい愛撫に驚くほど素直に声が溢れた。
夫とのセックスの時、強制的に繰り返される冷たい快楽に、漏れる悲鳴は細く刺々しいものだった。
感じることは『義務』だった。
――でも。
そうじゃないんだね。
愛して…愛され感じる快感を、今、私は初めてこの身体全部で受け止めていた。
「この痣は…殴られたんだよね?」
まだ僅かに残る変色した皮膚の上を、彼の唇が、舌が這い回る。
「この、赤黒い火傷みたいなのは?」
胸から下腹部へと、卑猥な音をたてながら続けられる愛撫。
「あぁん!な、舐めちゃダメ…!それは、煙草を押し付け…られて…あぁ!」
――僅かな間、動きが止まった。
荒く乱れた呼吸のまま、閉じた瞼を開ければ、静かに私を見下ろす相模くんと視線がぶつかった。
それは、とても熱くて切なくて…どこか、悲しそうに見えた。
「…相模、くん?」
「――あなた、は…」
「…え?――あ、んぅ…あぁ!」
何を、言いたかったのだろう?
問いかけようと開いた口から零れたのは、再びの愛撫で快楽の波に浚われた私の嬌声だった。
「んぁ!はぁ、あぁ…!」
「気持ちいいの?」
「ち、ちが…う!くぅ…」
「本当に?…こっちも?」
「あ、んぁぁ…!」
ショートパンツの裾から差し込まれた長い指は、下着をすり抜け、更なる奥を目指しているようだった。
「あ、そこは…ダメ!」
熱く火照った身体の、最も奥深く。
そこはもう、溢れ出た秘汁でぬかるんでいる。
今、触れられたら…。
――グチュリ
「んあぁ…!いや…ぁ、あぁ、イっちゃ…う…!」
グチュ…グチュ…
「んあぁ!はぁ、あ、あ…イ、イクっ…あ、んあぁぁ!!」
突き抜けた、甘く痺れる電流。
つま先まで張り詰めた、私の身体。
――やがて。
その肢体は力なく崩れて、愛しい人の腕に落ち抱きしめられた。
そして、訪れる静寂。