異界幻想ゼヴ・フィスロア・バランフォルシュ-1
彼女はいつも、泣いていた。
彼女は常に、悔いていた。
気づいてしまった彼女に全てを押し付けて一時の安寧を得た後、己の卑小さが情けなくて泣いた。
泣こうが喚こうが、自分が何とかしなければ何も変わりはしないのに。
立ち向かわずに最悪の逃げ方をしてしまった事を悔い、彼女は泣いた。
仲間達は彼女が泣いている事を心配していたが……根本的なスタンスが違いすぎるから、どうして彼女が泣いているのかを理解できなかった。
そんな、ある日。
世界が変わった。
隣界に送り込んだ彼女の孫娘が、戻ってきたのだ。
それは、本当に偶然。
あの広い世界で二者が出会う確率は、皆無と言ってもいいほど低かった。
ましてや彼女は行方を容易に知られる事がないよう、似たような文化圏の地域へ送り込まれる事を拒否していたのだから。
なのに二人は出会い、彼は彼女を連れ戻した。
最初は何て事をするのかと、彼をひどく恨んだ。
彼女に対する扱いを見ては、噴飯ものの所業に何度も彼を罵倒しそうになった。
けれど、無意識のうちから強く深く惹かれていく二人を見ているうち。
生き写しと表現しても過言ではないほど祖母とそっくりな彼女が、何事にも真摯に向かい合って全てを受け入れているのを目の当たりにしているうち。
恨み言などこぼさず、純粋な愛情と信頼で自分を迎え入れてくれた時。
彼女は、思った。
この子を、守りたいと。
手助けをしてあげたいと。
ピンクの少女に対する愛情が、失せてしまったわけではない。
祖母に全てを押し付けてしまった事に対する贖罪、なのだと思う。
彼女は、もう泣かない。
心の底から守りたいと思う人ができたから。
たとえそれが、破滅への道だとしても。