異国の姫君-8
「アース!」
「はいっ」
リンの部屋から顔だけ出したキャラの呼びかけに、アースは背筋を伸ばして返事をする。
「明日、アビィに乗って行きたいからエンさんに頼んできて。その後、国王に朝10時頃に行くって伝えて、あんたはそのまま待機!頼んだぞ」
「はい」
キャラはそれだけ言うとまた部屋へと引っ込む。
物凄い剣幕に直立不動で答えたアースにベルリアは吹き出した。
「……笑うな」
「いやあ、頼もしいなあ〜ほれ、姫のご命令だ。さっさと動け」
ブスッとしたアースは渋々とお姫様のご命令を遂行するために家を出ていった。
翌朝、キャラを迎えに来たエンは信じられないものを目にした。
トルコブルーのシンプルな形のドレスだが、ふんだんにドレーピングが施してあり、裾はスリットが入っていて何とも色っぽい。
いつもは適当に1つにくくっている髪も、今は複雑に編み込まれまとめられている。
首にはネックレス、耳には揺れるピアス、腕にも揃いのブレスレットが飾られていた。
「うっわぁ〜キャラ、超綺麗だよぉ♪」
『キュィ♪』
原型がわからない程に見事に化けたキャラは、輝くばかりの笑顔を向ける。
「ありがとうございます」
その笑顔だけでエンは真っ赤になる。
「本当に女の子だったんだねぇ〜」
余計な事を言ったエンに、キャラは笑顔のまま手元にあったコップを投げつけた。
ゴッ!という音と共に頭を抱えてうずくまるエンを無視したキャラはリンに最終確認をする。
「おかしな所ないですか?」
体を捻り、後ろ姿も見せる。
「大丈夫よぉ、徹夜して仕立て直したんだから!完璧よ!」
リンは自信を持って断言する。
「じゃあ、いってきますね」
大きくなったアビィに乗った2人はベルリアとリンに手を振って飛び上がった。
「うっわぁ〜キャラが居るとやっぱり違うなぁ〜」
キャラを前に座らせて後ろから庇うようにアビィに乗ったエンは嬉しそうに声をあげる。