異国の姫君-6
「姫君は憂い顔ですな?」
アースの台詞にキャラは自嘲気味に笑う。
「やっぱ、バレたか」
「おぉ、でっかい秘密だったぜぇ?で?本当なのか?」
アースの問いかけにキャラはため息をついて答える。
「うん。本当。オレがキアルリアだよ」
「古武術の爺さんの話は?」
「それも本当。オレは妾の子だからな。ファンでは妾の子は15まで色々と技術を学んで、その後、城で正妻の子の補佐に付く事になってる」
「へぇ」
キャラの場合、補佐というより護衛だったが……
「国王はなんて?」
「あ?ああ、『無理やり送り返したりしねぇから顔見せに来い』だとよ」
「寛大だなぁ」
普通は、他国とのトラブルを避けるためにさっさと強制送還だ。
「なぁんか企んでる気がするがな」
「ファンに帰るのは嫌だけどファンに迷惑をかける訳にはいかねぇなあ……」
国王が何を企んでるかはわからないが、姫としてファンの為に働く義務もある。
家出はしたが、別にファンが嫌いなワケではないのだ。
ファンの不利になるような事態は避けたい。
湖面を見つめたまま考え込むキャラにアースは提案する。
「第2の選択として、俺と愛の逃避行ってのもあるぞ?」
騎士団隊長という地位も魔導師の資格も全部捨ててキャラと共に居ようと言っている。
キャラは目を見開いてアースをマジマジと見る。
「嫌か?」
キャラを見返したアースは首を傾げる。
思わず抱きついたキャラはアースの胸に顔をうずめた。
「嫌じゃない」
全てを知ったうえで、自分のために何もかも捨てようと言ってくれる男が居るのがとてつもなく嬉しい。
「でも……もう逃げたくない」
一度逃げたから、二度はしたくないと言うキャラの頭にアースは唇を落とした。
「それでこそ、俺の女だ」
褒められたキャラはくすぐったそうに笑う。
「謁見いつ?」
「あ?明日だ」
「明日ぁ?!」
アースの答えにキャラは慌てて立ち上がった。
「どうした?」
「どうしたじゃねぇよ!……ったく、何も準備してねぇのに……」
「準備?」
キョトンとするアースにキャラはイラつく。