第三章「告白」-3
「……」
「……見てみます?」
「なに?」
「ちょっと待ってて、先生」
椅子から立ち上がったシノブは収納スペースの開きを空けると、小ぶりなダンボール箱を取り出した。箱を開けると、その中はまた箱だった。まるでロシアのマトリョーシカだ。中から出てきた箱は円筒形で、薄いピンク色をしていた。帽子なんかをしまっておくヤツだ。
「どうです?」
ピンクの箱からウィッグを取り出したシノブは頭にかぶると、髪を軽くかき上げ、ウィンクをかましやがった。この野郎……。
「すげえ似合う。似合うんだが……」
「先生? ……うわっ!」
俺はいきなりシノブの手首を握り、高々と持ち上げた。吊られたシノブの身体が俺に密着する格好となる。そのままシノブの、男とは思えないほっそりとした腰に手を回し、顔を近づけた。シノブの身体が弓なりにそり返り、自分で体を支えられなくなる。
俺も小柄だが、シノブは俺よりさらに小さい。腰に回した腕でシノブの軽い身体を抱え、俺は覗き込むような格好になった。この部屋を覗いているヤツがいれば、ソシアルダンスのホールドのように見えるだろう。
「お前さん、手が込みすぎだ」
「え?」
「ガキがオトナを誘うんなら、もっとストレートに来いってんだよ」
「えと……」
「お前は俺が好きか、そうでないか、すぐに答えろ。簡単な二択問題だ。制限時間は五秒」
「短かっ! 好き! 先生が好きです!」
「なら、相思相愛だな。シノブ、俺もお前が好きだ。初めて会ったときから惹かれていた」
俺はそのまま顔を近づけ、教え子の唇に口付けた。中学生の、女の子のように可愛らしい唇は、なぜかとても甘く感じた。