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家庭教師
【同性愛♂ 官能小説】

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第二章「面接」-1

第二章「面接」

 七月第一土曜日の午後、梅雨明け宣言はまだ出ていないが、前線が太平洋高気圧に押されて北上しているとかで、すでに真夏になったような陽射しが照り付けていた。
 俺はシノブの住む高級賃貸マンションに来ていた。マンションの入り口はオートロックとなっており、管理人もキチンと常駐しているなど、セキュリティがしっかりとしている。
 インターホンで七〇八号室を呼び出すと、落ち着いた女性の声が聞こえてきた。おそらくシノブの母親だろう。名乗ってから来意を告げると、入り口のロックが外れる音が聞こえてきた。エレベーターで七階に上がり、玄関のインターホンを押す。
「いらっしゃい、先生!」
 いつもと変わらない笑顔でシノブが出迎えた。シノブはデザインTシャツにベージュのハーフパンツという部屋着らしいラフな格好だ。塾に来ているときでも、うっかりすると性別不明なところがあるが、今の格好で女の子と言われれば、疑う者は少ないだろう。
「先生、迷いませんでした?」
「大丈夫だったよ。お前さんのくれた地図どおりに来られた。駅からもこのマンションが見えてたしな」
 シノブの案内でリビングに通された俺は、シノブの母親と対面した。
「こんにちは、いつも息子がお世話になっております」
 シノブは男の子としては規格外に可愛いが、母親は落ち着いた美人といった風貌だ。色白で長い髪をアップにしており、長いもみ上げを胸元に垂らしている。口元のホクロが印象的だ。年の頃は三十代半ば、俺より五歳くらい年上だろう。
 シノブがそのまま女として成長したらこうなるだろうと思われた。どうやらシノブは、母親の遺伝子を色濃く受け継いだようだ。
 ソファを薦められた俺は、失礼にならないようにリビングを軽く見回した。
 柔らかくゆったりとしたソファ、大画面の液晶テレビ、高級そうなオーディオセット、壁には絵が掛けられている。テレビの脇にあるガラス扉のキャビネットには、英語やフランス語のラベルが貼られた何本かのお酒と、お酒に合わせた各種のグラスが収められていた。
(ありゃ、クリュグのヴィンテージか? 俺の月給の半分が飛ぶぞ……)
 どうやらシノブの家は結構裕福らしい。塾を二個とか、塾プラス家庭教師とか、平気で言い出すわけだ。
「シノブ、キッチンにお茶の用意がしてあるから、持ってきてちょうだい」
「はぁい」
 シノブの運んできたティーセットに洋菓子を摘まみながら、しばらくはシノブの塾での様子などで談笑していた。
「シノブはやれば出来る子なんですよ」
「母さん、それ受験失敗のフラグだよ」
 俺は正直ホッとした。シノブが母親のことを「ママ」と呼ぶのではないかと気が気でなかったのだ。
「知ってるわよ。で、本当の所はどうなんです、先生?」
 シノブの母親は、なかなか良い性格をしているようだ。
「このままのシノブ君の成績だと、希望校への進学はムリですね」
「あら」
「だから、これから夏休みにかけてが勝負でしょうか?」
「結構、ハッキリおっしゃるのね」
「ウチの塾では、ウソとお世辞は厳禁なんですよ。もちろん、成績が伸びればちゃんと褒めますけど」
「素晴らしい方針だわ。良かった、これならお任せ出来ます」
「では?」
「ええ、正式にお願いします」
「やった!」
 シノブは母親の隣で小さくガッツポーズをした。こ、こいつは……。シノブは他人から自分がどう見えるか、考えてもいないんだろうな。
「シノブはちょっとお部屋に行っててくれる? 先生と二人でお話がしたいの」
「わかった。終わったら呼んでよ」
 シノブがリビングから出て行くと、母親は俺をじっと見つめた。


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