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家庭教師
【同性愛♂ 官能小説】

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第一章「誘惑」-2

 ***

「この間、提出してくれた希望校だけどな、お前さんの学力だとちょっとキツイかもしれんぞ?」
 シノブが塾通いに慣れた中学三年のGW明け、俺とシノブは進路相談を行なっていた。
「でも、教育大学の付属校なんですよ。今、ちょっと頑張れば大学受験はしなくてもいいし、進路はもう教育学部って決めてるんで、この方がいいかなって」
「ほう、ちゃんと将来のことを考えてるんだな」
「ヒドいですよ、先生。ちゃんと考えてますってば」
「いや、悪かった。ウチの生徒はとりあえずちょっと上の高校に行って、将来のことは高校で考えるってのが多いんでな」
「友達もほとんどがそうですけどね」
「だけど、どうしたもんかな。塾の授業時間はカリキュラム上、これ以上増やせないしな。自分で勉強する時間を増やすしかないぞ?」
「母は塾をもう一つ増やそうか、と言ってました」
「身体壊すぞ。それなら塾の無い日とか、前後の時間とかで、ここの自習室使った方がいいと思うが?」
「先生にも毎日会えますしね」
「……なに?」
「だって、分からないことがあったらすぐに聞けるじゃないですか」
「あ? ああ、そうだな」
 俺は一瞬ドギマギしてしまったが、無表情でやり過ごした。やり過ごせたと思う。
「本人にやる気が十分にあるみたいだからな。目標も明確だし、この志望校を目標にやっていくか」
「はい! 頑張ります!」
 それからシノブはメキメキと成績を伸ばした、とはならなかった。
 だがもちろん、下がったわけではなく、問題となるほど伸びていないわけでもない。もう少しテンポアップしてもいいかと思うが、最終的に受験までに間に合えばいいのだ。ノンビリして良い訳ではないものの、まだまだ時間的な余裕がある。

 ***

「先生、アルバイトしませんか?」
 梅雨の最中、シノブは俺におかしな提案をしてきた。
 窓の外は、夕暮れの雨でどんよりとしている。俺とシノブは、進路相談のための個室で話していた。テーブルに椅子だけの簡素な小部屋だ。警察の取調室に似ていなくも無いが、調度や壁は落ち着いた明るい色で統一されているので、重苦しい雰囲気は無い。
「どういうこと?」
「家庭教師をして欲しいんです。土曜か日曜に。土日って、先生は普通に休みですよね」
 塾は土日が定休日だ。
「母と塾を増やすか、家庭教師を付けるかって話をしたんですよ。そしたら、母が塾の先生に家庭教師を頼めないかって」
「結構、無茶言うな。お前のお袋さんは」
「ムリですか?」
 シノブは上目遣いで聞いてきた。意識してのコトではないだろうが、こいつは……
「まあ、確かに副業は禁じられてないが……」
「先生、お願い! 今更、他の塾に行ったり家庭教師に来てもらったりってすると、余計に疲れちゃうと思うんです! だったら気心の知れた先生が良い!」
 シノブは身を乗り出し、あろうことか、俺の手を掴んでお願いしてきた。こいつはどこでこんなお願いの仕方を覚えてきたんだ。天然だったら尚のことヤバイ。
「分かった! 分かったから手を離せ!」
 俺はこれまでに付き合った女の顔を思い出しながら深呼吸した。
「まったく……、おかしな気分になるじゃないか」
「ボクは男ですよ?」
「わーっとる。だが、世の中には男でも女でもオーケーってヤツが居るんだ」
「ああ、知ってます。幼馴染にそういう子が居るんですけど、その子は中学から私立の鈴城に行ったんです」
「あそこは女子校だろ?」
「ええ、だから、女の子が好きな女の子なんです。……先生は?」
「俺はノーマルだ!」
 俺はしれっとウソをついた。さすがにこの歳になると、社会人スキルである平気なウソも身につけている。
「じゃあ、大丈夫ですね」
「とりあえずはお前のお袋さんと会う。報酬の件とかもあるしな、話はそれからだ」


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