消えた光とかすかな光-6
ーえ!
「マスター!」
私よりも先に大輔くんがマスターを呼んだ。
「マスター、すみません!」
大輔くんが謝る。
私も謝りたいけど、涙で声が出ない。
マスターは私と大輔くんを見ながら言った。
「いや、気にしないで。俺も何か飲みたくなってね!由梨ちゃんが泣くのは俺は嫌だからね。今日は疲れたろ??由梨ちゃん、寒いし、お酒でベトベトで気持ち悪いだろ??裏にシャワー室がある。代わりの服とはいえんが、女性用制服があるからそれに着替えなさい。温かい飲み物を準備しておくから、浴びておいで。」
マスターが笑顔で言ってくれた。
その優しさにまた涙が出る。
「由梨、そのままじゃ風邪引くから行ってこい。俺が待ってるから。」
そう言って大輔くんはゆっくりと手を取ってくれた。
「こっちですよ!どうぞ。」
さっきのウエイターさんが制服を持って、手招きしている。
皆に会釈して私はシャワー室に向かった。
シャワー室は裏の従業員室を抜け、隣のお家にあった。
ウエイターさんに聞くと、ここはマスターのお家の浴室だということだった。
本当に申し訳なかったけど、マスターの心遣いに心が少しあったかくなった。
シャワー室から出ると、用意された制服をお借りする。
真っ白なブラウスに黒のスカート。気を遣ってくれたのか、ひざ掛けとストールが置いてあった。
廊下に出ると、綺麗な女の人がいた。
「あの、すみません、私!」
「聞いてますよ。」
女の人はそう言って柔らかく微笑んで、続けた。
「大変でしたね。さ、皆待ってますから。大輔くんは特に心配してますよ。」
そう言って私の手を引いて来た道を戻って行く。