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光の道
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消えた光とかすかな光-5

「酒が目にしみてるんだ、真っ赤だぞ。涙も出るぞ。マスター、ちょっと裏かしてくんない??」

大輔くんがマスターに言う。
マスターが満面の笑みでカウンターの内側に入れてくれる。
でも私と目があった瞬間何故か泣きそうな顔で私を見て笑った。
それにホッとしたのか、ついに涙がでて来てしまった。


「お前らも今日は帰れ。他の客に迷惑だ。」

大輔くんが聡に言う。


彼女の友達も居心地は悪いだろう。
そそくさと帰る準備をする。

彼女は聡に何か言うと私に向かって頭を下げて、友達と出て行った。


聡と目があった。

「由梨、あのさ…」

私を呼びながら近づいてくる。
逃げたくて1歩下がってしまう。
すると、私の視界から聡は消え、大きな背中ていっぱいになった。
大輔くんが私と聡の間に入った。

その背中の持ち主が言う。

「聡。由梨にはもう言うことはないだろ。お前は最初に由梨から目を逸らした時点で、由梨じゃなくてあの嬢ちゃんを選んだんだ。由梨だってそれに気づいたから、何も言わず、彼女を立てたんだよ。わかってるだろ??もうこれ以上由梨を泣かせるな。」


その言葉で、私はもう涙が止まらなくなった。
そして、一つの言葉がよぎった。

これだけは言わなくちゃ。
そう思って、涙をぬぐいながら、大輔くんのYシャツを摘まむ。

大輔くんが驚いた顔でこっちを向く。
カウンターの向こうには2人のお客さん、そして今にも泣き出しそうな聡がいる。

私は涙を右手で拭いながら、左手の大輔くんのYシャツを握りしめながら行った。
震える声を我慢して。

「聡…くん…バイバイ。」

もう、そのまま涙が次から次に出てくる。

「金山くん、今日のお代はもういいから。席を外してくれるかい??由梨ちゃんは頑張ったんだ。これから、金山くんが頑張らなきゃいけない。男だろ??女の子にここまでさせてどうする。」

マスターはそう言うと、ウエイターに目で合図をする。
そのウエイターさんは、お水を持って聡の所まで行く。
聡はお水は受け取らない。

「ありがとうございました。」
そう言うとウエイターさんはドアまで聡を連れて行く。

聡は最後に振り返った。
でも私は怖くて大輔くんの後ろに隠れてしまった。

そのまま聡は出て行った。
ウエイターさんは看板を仕舞い、プレートを"close"にした。



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