秋桜の季節-6
「お、サンキュー。」
石田さんは笑いながらビニール袋を受け取る。
そして車の方に歩き出す。
ビニールを渡した瞬間、土谷さんの視線が私の方に流れ、目が合う。
「はじめまして。土谷、土谷要です。突然ごめんね。彼女ちゃん職場の人??」
「いえ、あのっ」
突然でフリーズしちゃう。
一瞬冷静になったのは気のせいかもしれない。
でもちゃんと足だけは動かす。
彼女じゃないし、職場でもないです!
いいたいことはあるのに言葉にならない…
その時隣から石田さんがサラッと言ってくれた。
「要。彼女はうちがお世話になってる郵便局の人だよ。高梨さんっていうんだ。ほら、彼女に気を遣わせちゃいけないから、今日はここで失礼するよ。」
「あ、創樹が前話して…
「か、要!」
石田さんが中断する。
「わりぃ」
土谷さんは笑って答えた。
せめて自分のことくらい自分でいわなきゃ。
「あの!」
2人の視線がこっちに向く。
「私、高梨伊織と申します。こちらこそ突然すみません。」
それだけ伝えると、土谷さんがすかさず言った。
「伊織チャン??綺麗な響だねー!」
「あ、ありがとうございます。でもフツウの名前ですし、種も仕掛けもありませんし!画数多くて大変ですよ!」
ーぷっ!
石田さんと土谷さんが笑う。
え??
何で??
「いやー伊織ちゃん!ウケるね!今日時間なくて残念!緊張させてごめんね。創樹とまた今度ゆっくり飯でもどう??これ、俺の名刺。」
「おい、要!」
石田さんが慌てて突っ込む。
私は意味がわからないまま、渡されるがまま名刺を受け取り、呆気にとられる。