スタートの時-6
次の日。
僕は普通に学校に来ていた。
鵬蓮さんの話では影とは言え、その存在を消し去った事はそれなり効果があって。
サダニシュウジの本体が攻めてくる事は一ヶ月くらいはないとの事だって。
それでも貞ちゃんは無論、お菊ちゃんまで来る対決に備えて鵬蓮さんのお寺で合宿修行に入っちゃった。
僕も一緒に合宿したかったのに。
僕は普段の生活を続けろって、それが僕の修行の第一歩だって鵬蓮が言うから。
それにやっぱ高校くらいはちゃんと卒業しとかなきゃ…って学業優先。
一見は平々凡々のヘタレ高校生に戻ったんだ。
けどね…そんなに甘くはなかったんだ。
「俊樹くん…例の噂を聞いたかい?」
自分の机について漫画雑誌を読んでいた僕の横に座る隆。
神妙な面持ちで僕の顔を覗き込んできた。
「なんの事だい?隆くん」
読んでた漫画雑誌から顔を上げる僕。
「知らないのかい?図書室の幽霊の噂…これが本当に霊の噂だよ」
自分では上手い事を言ったと思っているのだろ。
ニンマリとした隆の奴。
「バカな…幽霊なんている訳ないじゃないか」
棒読み丸出し。
思いっきり挙動不振な僕。
しかし相手が隆でよかったぁ。
「さては俊樹くん…幽霊が怖いんだね」
僕が怖がっていると思ってニタニタ。
まさか僕が幽霊さんたちと仲良くしてるなんて知るよしもないよね。
ってか…知られちゃマズいよね。
「いや怖くなんかないさ!ただ興味がないだけさ」
とは言っても。
隆にビビってると思われるの癪な話だ。
「それがだね…俊樹くん、その幽霊は若い女性でね、しかもなんと裸らしいぞ」
最も重要な事を話すように声を潜める隆。
なんだ裸なのか。
ってハダカ!?
「マジかね!」
そーなんだよね。
僕の今の感覚では幽霊さんも生きてる女の人も変わんないんだよね。
そんでもって裸なんて聞いちゃったらさ。
「行ってみましょうかねぇ…図書室」
幽霊さんをどう思っているかは知らないけど。
隆も裸と言う言葉には滅法弱い。
「まぁ…出ないとは思うけど…あっ!そーだ本を返しに行かなきゃ」
無論、僕も女の人の裸には依然として興味持ちまくりだ。
「ほうほう…君が読書とは青天の霹靂だがまぁいいでしょう」
腕を組んで哲学的な顔をする隆。
「そいつは心外だねぇ…隆くん」
と言いつつも鼻の下が伸びきっている僕。
「まぁ…いいでしょう。では放課後、僕も付き合いますかな」
と言ってる隆の鼻の下も伸びきっていた。