スタートの時-11
「では…俊樹さん、私を襲うつもりでかかってきない」
まだ足踏みを続けている鵬蓮さん。
その足をゆっくり、ゆっくりと止めてゆく。
けど…。
「襲う?」
内心ドキッとする僕。
襲うイコール戦うって事だよね。
一応確認してみようかな…エッチな肉体鍛練って言ってたし。
「あの…どのように襲えば…」
つい両頬が弛みがちな僕。
「男が女を襲うと言ったら…決まってるでしょ」
どこまでもクールな鵬蓮さん。
でも…そう言う事なら。
「失礼します!」
完全に顔が弛んだ僕。
ジョギングの疲れも忘れ、凄い勢いで立ち上がると。
鵬蓮さんの細身のジャージ姿に抱きついてゆくけど。
スッとブレる鵬蓮さんの姿。
あれっ!空がひっくり返った。
ズデデデェ!
「あたっ!!」
あっと言う間に地面に大の字になってる僕。
物の見事に鵬蓮さんに投げ飛ばされていた。
「どうしました?さっ…襲って下さい」
大の字で空を見上げる僕の顔を。
イタズラっぽい笑みを浮かべ覗き込む鵬蓮さん。
クールな鵬蓮さんがその笑顔は反則だって。
もう一度、立ち上がり鵬蓮さんに抱きつく僕。
おし!今度は抱きつけた。
「よぉぉし!大人しくするんだ!」
なんて輩のフリをしながらチュウをしようとする僕だけど。
えぇ!?
今度はゴロンと後方に沈む鵬蓮さんの身体。
そのまま僕はまた天地逆転。
「ぃてぇぇぇぇ!」
今度は巴投げで見事に投げ飛ばされた僕。
「もう!痛いよぉ!」
って今度は。
足を掬いにゆくけど。
フワッと飛び上がった鵬蓮さん。
僕の背中を踏み台にして向こうに着地。
もー全然襲えないよぉ!
身体中痛いし。
早くも半べその僕。
「男の子でしょ!なんです!その顔は!」
って…ここでもスパルタの鵬蓮さん。
厳しい顔のまま。
自分のジャージのファスナーをジィィィって下げたぁ。
わっ!例の傷だらけだけど白くて綺麗な鵬蓮さんの素肌。
小ブリのおっぱいの膨らみもちょっと見えてるぅ!
鵬蓮さん…Tシャツはおろかブラもしてないのぉ!
よぉぉぉし。
またまた掴みかかってゆく僕。
それでも投げ飛ばされた。
それでも掴みかかった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
何回投げ飛ばされんだろ。
大の字に地面に寝転んだ僕。
身体中痛いし、息絶え絶えでもうピクリとも動けなかった。