淡恋(後編)-4
…あっ、あっ…ん…
僕はからだの奥に、ふとあの渚に吹いてくる遠い潮風を感じた。
尻穴の粘膜が熱く吸着度を増し、信じられないほどマサユキさんのものをしっかり受け入れ、肉
襞が小刻みに痙攣ししながら収縮しはじめる。
僕は熱っぽい喘ぎを繰り返した。マサユキさんが僕の背後から挿入したものの反復をゆっくり始
めると、僕の潤んだアナルの粘膜は蕩けるような潤みで充たされていくのだった。
ギシギシとベッドが鳴り、弓なりに腰を反らせた僕と、背後からのしかかるマサユキさんの体が
ひとつになり激しく揺れる。マサユキさんは腰を揺すり、荒い息を弾ませていく。僕は背中をく
ねらすように悶え、マサユキさんのペニスから伝わってくる息づかいをからだの中に思いっきり
吸い込んだ。
そして、ふたりのからだは、青い夏空の中の眩しい光を浴びるように、蕩けるような高みに達し
ていった。
…カズオが、もし女の子だったら、もっと好きになれたかもしれない…
その最後の言葉を僕に告げると、マサユキさんは、地元の会社をやめ、東京へ行ってしまった…。
「マゾのカズオさんの顔って、わたしのペットにしたいくらいかわいいわ…」
眩暈をおこしているような薄い意識の中に、女の淫猥な声が聞こえたとき、僕はふたたび現実に
引き戻される…。
ショー部屋と呼ばれる地下室のライトの強い光によって、僕の額と首筋には、じわりと汗が滲ん
でいた。ステージを囲む薄暗いボックス席の中では、客たちが酒のグラスを手にしながらも、
僕が女に嬲られる姿を、じっと喰い入るように見つめていた。
天井の滑車から垂れ下がった鎖につながれ、頭の上部に伸びきった手首の皮膚に革枷が強く食い
込んでいた。開いた足の爪先だけがわずかに床に触れるように吊られた僕のからだは、痛々しい
鞭の幾筋もの条痕で朱色に染まっていた。
女は、ゆっくりと鞭を床におく。
そして、僕に寄り添いながら、掌で僕のペニスを包み込み、ゆっくりとしごき始める。
鞭の痛みとペニスを撫で上げられた快感が交錯しながら僕の中の疼きをえぐりあげ、ペニスは
僕の意志に反して、女の手の中でふたたび硬さを増し、先端が微かに潤んでくる。
薄笑いを浮かべた女は、床に置いてあった極太の赤い蝋燭を手に取った。
そばにいたサエキが、淫靡に笑いながらライターで火をつける。ステージの中央だけを淡く照ら
す灯りの中で、ボォーと炎が浮き上がる。客席の数人の客の囁き声と小さな笑い声が、かさかさ
と聞こえてくる。