焔の精霊-18
「だろうな。風呂も入ってっぞ……ってまるで新婚の会話だな」
「男女逆だけどな」
確かに、と肩をすくめたアースは台所に引っ込んで料理の仕上げにかかる。
家中に充満する良い匂いに、お腹が鳴ったキャラはサッサと風呂に入った。
風呂から上がると丁度食事の準備も終わったので2人仲良く席につき、食事を始める。
「思ったより帰りが遅かったな」
食事をしながらアースはキャラに言う。
「あー、エンさんと話してた」
キャラの答えにアースはピクリと手を止める。
「お前ら仲いいよな……」
エンはああゆう性格なので比較的誰とでも仲良くなるが、キャラは他人と一線を引く所がある。
しかし、エンに対してはその線が初めから無かった。
アビィの存在もあるのだろうがアース的にはやはり面白く無い。
再び手を動かしながらも、ブスッと不機嫌な顔になったアースにキャラは苦笑いする。
「あんたの話をしてたんだよ」
いったいどんな話をしたのか、と益々渋い顔になる。
「キモいってさ」
「あぁ?」
「メロメロデレデレ過ぎてキモいって」
「あぁ……」
そりゃあそうだろうなぁ、とアースは納得する。
今までのアースをよく知ってるエンなら尚更だろう。
「この家に女を連れ込んでる事も信じられないし、自慢の手料理を振る舞っているかと思うとゾッとするって」
なんだか酷い言われようだな、とアースは居心地が悪くなる。
「なぁ……そんなにオレの事が好きなのか?」
「ぶはっ」
アースは飲んでいたお茶を吹き出した。
「汚いなぁ……」
「ゲホッ…いやいやいやいや…お前が変な事言うから……」
顔をしかめたキャラに、テーブルを拭きながら言い返す。
「真面目に聞いてるんだけど」
拗ねたような顔で箸を口にくわえる。
(う……可愛い……じゃなくて…)
「つぅか、今まで何だと思ってたんだ」
出会ってからひと月どういうつもりで一緒にいたのか?
「初めは…まぁ…成り行きかな?」
「あぁ…まぁなぁ」
「このひと月であんたの噂を色々聞いたら……遊びなのかなぁって思った」
今までの女癖の悪さがこんな所で仇となり、アースは決まり悪そうに目をそらす。