焔の精霊-16
「まぁいっか♪アビィと友達になれたって事だもんね♪」
『キュア♪』
悩むぐらいなら楽しく行こう、がエンの信条。
見事なポジティブ思考にキャラはポカンとする。
「……あいつは昔っから前向きだ」
アースはエンとアビィを見ながら言う。
「羨ましいな」
キャラはというと、召喚師だとか言われてかなり動揺している。
アースはそんなキャラの頭を乱暴に掴むと自分の胸に押し付けた。
「初めて会った時の事、覚えてっか?」
キャラは押し付けられた顔を少し上げてアースの顔を見る。
「お前がお前だから好きになった」
告白の言葉を口にしてアースはキャラと視線を合わす。
「今もその気持ちは変わってねぇぞ?お前が何者であっても手離す気はないからな。覚悟しとけよ?」
だからあまり思い悩むな、と頭を掴んだ手に少し力を入れる。
そんなアースの行動はキャラを安心させるのには充分効果があった。
「悔しいなぁ」
こんな簡単に安心させられて、なんか負けた気がする。
「あ?」
「なんでもない」
頭を胸に擦り付けて少し甘えると顔をあげて笑ってみせる。
周りから見えないように額に口付けたアースは手を離してエン達に向き直る。
「つぅか、こいつデカいままなのか?」
いくらなんでも邪魔だろう、とアースが声をかけると、エンがアビィに聞いてみる。
「アビィ、ちっちゃくなれる?」
するとアビィはシュルシュルと縮んで、いつもの大きさになりエンの頭に陣取った。
「……できるんなら壁壊すんじゃなかった……」
無駄に魔力を使ってしまったな、と思ったアースはため息をついてハッと顔をあげる。
「しまった!講義ほったらかしだった!」
慌てたアースは急いで教室に戻る。
慌ただしい後ろ姿を見送ると、残った者達で壊れた談話室の修理と片付け。
終わった頃には日もとっぷりと暮れてしまっていた。
「送っていこうか〜?」
暗くなったし危ないかも、と言うエンにキャラはにっこり笑う。