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スージの森
【家族 その他小説】

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完・決-1

オレンジの空が濃くなり、紺色が混ざり始めた。
日が暮れるまでもう時間が無い。いくら冬だからって急ぎすぎじゃないか。
もう手持ちの食料は無い。
これ以上森にいたら、近いうちに2人とも・・・・・

いや、いっそ飢え死にした方がいいか?
凄くつらい死に方だろうけど、あんな奴に喰われて死ぬよりはましだ。
この世に跡形も残らず、髪の毛一本すら残らないで死ぬのは嫌だぜ・・・・・

それにしても、疲れたな。

昨日からずっと歩き続けて、おまけにサンドイッチ一切れすら口にしていない。
もうそろそろ、考えるのも面倒になってきたところだ。早く終わってくれ。

いっそこのまま・・・・・


「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ん・・・・ああ、別に。どこも悪いところは無いぞ」


いけない、フィアの前では強がらなくちゃ駄目だ。
例え、もう心が折れかかっていて、考えるのが嫌になっていたとしても・・・だ。
それでも、最後の最後までフィアに辛い顔は見せたくない。だってこれ以上泣かせるのは、もう嫌だからな。
この1日と半分くらいでだいぶ涙を流したから、フィアに哀しい思いをさせたくないんだ。


「お兄ちゃん、いいよ。私」
「どうした?フィア。いいって何が」
「私ね・・・あいつに喰べられても、いいよ」
「・・・・・・フィア?」
「どっちか1人って言ってたよね。だから、私が・・・」
「バカ、罠に決まってる。助けるわけないだろあんな奴が。両方とも喰うつもりだよ」
「・・・・・・・・・」

何を言いだすのかと思ったら、そんな馬鹿な事を言うのはやめろ。自分を粗末にしたらいけない。
そう言って諭そうとしたが、俺自身も同じ様に考えていたのに気付いて、思わず苦笑いした。

「喰われるなんて嫌だね、俺はここから出たいんだ。フィアだってそうだろ?」
「・・・そうしたいけど、でも無理だよ。出口はみんな壁に覆われてたじゃない」
「大丈夫、俺に考えがある。あいつを呼んでもいいか?」
「考えって・・・?」

投げ遣りになっちまったらおしまいだ。俺には、死ねない理由があるんだから。

あいつの思惑通りになるのは嫌で仕方なかったが、こうしていてもいい方法が思い付く訳でも無さそうだ。


「・・・そろそろ、呼ぶか」
「・・・・・・・・・」


フィアは静かに頷いた。
実は、いい考えなんて無い。フィアに嘘をつきたくは無かったが、本当に何も思い付かないんだから仕方ないんだ。
でもこれじゃ結局投げ遣りになっちゃうのか。

だが、うまい考えなんか無いけど、意地でも出てやる、そしてフィアを必ず助けたいっていう気持ちはあるぞ。
もう、他に何も無い。縋るものはこの2つだけなんだ。


さあ・・・・・じゃあ、もう呼ぶか。
諦めてはいない、だけどこのまま避け続けるのも限界だからな。



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