Crimson in the Darkness -再会-V-1
《オイ》
リーを家に帰して、何となくユグドラシルの傍に来てみたら、誰かに声を掛けられた。
けど、辺りを見渡しても誰も声を掛けてきた様には見えない。空耳か? と思っていたら、また聞こえた。
《オイ! シカトか!? 人間のクセに》
周りを見渡すと、やっぱりそこにあるのはユグドラシルだけ。声の聞こえる範囲に人はいない。
《お前ら、オレサマのことユグドラシルって呼んでるだろ!》
おいおい、冗談だろ。
「樹が喋ってるのかっ?」
《ったりめーだ! お前、緑の瞳のクセに精霊は初めてかよ》
「悪かったな。ユグドラシルに会ったのは初めてだし、あっちにはンな高齢の樹がなかったしな」
この国で16年暮らしたけど、見ることはなかった。ユグドラシルはオレの町には届かなかった、…………だから……。
《へ! やっぱ、てめえの目はオレサマを映さねぇか》
樹の葉、枝、何処を見てもその姿はない。
精霊の姿は樹に愛された者にしか見えない。と、聞いたことがある。