-angelax--1
天使は悩んでいた。
何故?
「世の中に幸せを感じられない人が多すぎる」
…という理由からだ。
天使がどんな仕事をやってるかなんて、人間は考えた事があるのだろうか、いつも遊び呆けてるなんて思われてはいないだろうか…
天使はさらに悩んだ。
因に、天使の仕事とは、人間を幸せを与える事だ。この悩める天使は、人一倍…いや、人では無いから、天使一倍と言った方が適当か。まぁ、とにかくこの天使は頑張っていたのだ。毎日毎日、やる気満々で飛び立っていた。しかし、天使が下界であげた幸せは殆どの人が気付いてくれず、そして、幸せを与えた人全てが、その幸せに満足してはくれなかった。
まあこの天使は、仕事をし始めたばかりな上、与えられる幸せも小さい。例えば、一足先に春の風を感じさせたり、夏の青さを感じさせてあげたり、秋の色を見せたり、冬の匂いを気付かせたり。そんな感じの事位しか出来ないのである。
その幸せを感じてくれる人がいないから、天使は、休憩も出来ず今まで頑張って来たのだけれど、いい加減自分がこの仕事に向いてないような気分にまでなってしまい、悩んでしまっていたのである。
「何故、僕のあげる幸せに気付いてくれないんだろう…」
道路に停まっていた車の上で、天使は考え込んでいた。
ブウォンッ
突然その車が動きだしてしまった。因に天使は姿も見えないし、重さも無いから、人間には何の迷惑も与えない。だからという訳でも無いが、そのまま天使はその車の上に乗り続けた。
その車がビルの隙間にある公園の横を通ったとき、天使は、女を見つけた。
彼女は一人で公園にいた。高校も辞め一人。十八にして、歌舞伎町の女として、軽く地位を築いていた。金は腐るほどあるのに、幸せを感じられない。孤独、寂しい、つらいつらいつらい。
そんな風に彼女が、深い深い孤独に陥ってしまっていた時、その車は通った。彼女は、人生で一番デカイ驚きを感じた。何せ車の上に変な白い服をまとった人間が、胡座をかいて座っていたのだから。しかし、こんな孤独を感じている時にとてつもなく気分が高ぶっていた。白い服をまとった人がこれ以上無いくらいに気になった。興味が湧きまくった。そして彼女は近づいた。
彼女がいた公園の前の信号でその車は停まっていた。その車の上で天使は動揺しまくっていた。何故何故何故…明らかに二人は同時に互いを認識した。つまり目が合ったのだ。天使は理由が分からなかった。彼女は明らかに人間だったはず。その証拠に彼女は凄く驚いていたし今もこっちに近づいている。ヤバい。としかもう考えられない。非常事態過ぎる。早く青に!その願いも空しく、彼女は、天使に近づいていた。
ー飛べば良かった。ー
気付くのが遅すぎた。
再び、彼女と天使は目が合った。
もう、それは、運命であり宿命だった。