Purple ecstasy-11
「・・・・・・」
こうして手のひらを見つめていると、ほんの数時間前の“あの瞬間"がよみがえってくる。
ルールーという成熟した美女の肌ざわりと吐息、
そして掴んだ尻の肉感に 背中で感じた豊かな乳房の弾力。
「暫く女に触れていなかったせいか・・・・」
今まで感じたことのなかった“女の魅力"に正直ラグナの気持ちは一杯だった。
あの時名前はおろか住んでいる場所すら聞かなかったことが悔やまれる。
(・・・明日あの入り江に行けば、また逢えるだろうか・・・)
休暇に来た目的も忘れて今日出逢ったばかりの女のことばかり考えている。
思わず苦笑するラグナの眼前に、できたばかりのマティーニが差し出された。
黙ってそれを手にとり、一口だけ口に含むと、
いつも飲み慣れた筈のマティーニの味が今夜は何故か甘美なものに感じられた。
「いいね、この味。癖になりそうだ」
「お誉めいただきまして」
「まるで成熟した美女を思わせるような・・・」
「・・・その口振りですと最近そのような美女を目にしたようですな」
マスターの鋭い指摘に、ラグナは苦笑してグラスの中身を飲み干した。
「噂をすれば・・・ほら、島で1、2を争う美女のご登場」
少しおどけた口調でバーの入り口を目で示す老マスターにつられ、
ラグナも思わず振り返る。
そこでラグナの瞳孔は拡大し固まった。
ラグナの視線の先、
ホテルの1階から地下に通じる螺旋階段を降りてくる“島で1、2を争う美女"こそ、数時間前に入り江で出逢ったルールーその人だった。