熱帯夜の終わり-8
「これ、ありがとう」
アイス枕にタオル、スポーツドリンクは飲み干しちゃったけど、それを注いでくれたコップはちゃんと洗って乾かした。
「いらない、あげる」
「マジで?やった!このタオル超気持ちいいんだけど」
やたら肌触りがいいそれにほお擦りすると、
「あたしのお気に入り…」
恨めしそうにその光景を見てる。
「返すってば」
「いいよ。また買う」
「…じゃ、遠慮なく」
タオルをギュッと首に巻いた。
「コップは?」
「それもあげるってば」
「ありがと」
「…どういたしまして」
「…」
「…」
「…」
「じゃあね」
「えっ!?」
沈黙の後で何か切り出してくれるのかと思ってたのに、帰るって何!
前と同じように、閉められていく窓に手を伸ばして無理矢理開けた。
「みのりさん」
「それ以上近づいたら大声出すから」
「そんな警戒しなくても、何もしないって」
「嘘」
「それも信じてくれないの?」
「前科があるからよ!」
「前科?」
「前科!」
前科?
ぜんか?
「あ、ジェンカ?」
「前科!」
「何それ」
「何って…」
首を傾げると、
「本当に覚えてないの?」
眉間にシワを寄せて俺を見た。
「へ?」
「やっぱり信用できない」
「いやいや、詳細を教えてよ!いつの話!?」
「この前、熱出した時」
「何したの?」
「だから――…」
言いかけたかと思うと、今度はみるみる顔が赤くなる。
「言えるわけないでしょ!」
「えーっ」
何、俺この人になんかしたの?
思い出して赤くなるような事?
口に出せないような事?
――って何!?
「ごっ、ごめん!とりあえず謝る!身に覚えはないけど、一応、ごめん」
「とりあえず?一応?」
「あ、いや、」
「口先だけってこと?」
「そんなこと…」
「あーゆうの慣れてるんだ」
「あ、あーゆうの?」
「そういえば、新しい彼女がどうとか遊びがどうとか言われてたもんね」
また吉村絡み。
やっぱあいつ絶交だ。