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スージの森
【家族 その他小説】

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3・探-1

雀の鳴き声がして目を覚ますと、すっかり辺りは明るくなっていた。
・・・心配してんだろうな、父ちゃんも母ちゃんも。
まだ、帰ってないよな?森の駐車場にいるよな?
店はどうなってるんだろう。開けてるといいな・・・
それは無理か。こっちに残ってるなら、出来ないからな。

どこかに出られる場所が必ずあるはずだ。諦めてたまるかよ。
むざむざこの命をくれてやるつもりなんて無いんだからな。


「フィア・・・」


フィアはまだすやすや寝息を立てている。
昨日は寝る前に泣き出してしまい、なかなか寝付けなかったので、起こすのは可哀想な気がした。
あれだけお化けが出るって噂を怖がってたんだ。
実物が目の前に姿を見せた時の恐怖は、俺とは比べものにならないくらい大きかったに違いない。

俺だって、あいつの前では虚勢を張って強がっていたが本当は怖いのだ。
丸い形に大きな目と口がある姿はどこか愛嬌を感じなくもなかったが、あの鋭い歯を見て背筋が凍り付いた。
もしあんなもので噛み付かれたら・・・・・

さっさとこの森を出なくちゃ。
記憶を辿り、いつも使ってる場所以外の出口を思い出してみよう。

確か、駐車場が一番広いところがいつも俺達が使ってる出口だったはず。
他の所を思い出そうとするが、なかなか浮かんでこない。そこ以外はあんまり使わないからな・・・・

案内図にあったのは確か、全部で4つあったはずだ。
そのうちひとつはもうあの透明の壁に遮られてたけれど、あと3つはまだ大丈夫だと思う・・・
ここから出られないなんてあの化け物が言ってたが、自分の目で確かめる迄は信じない。

たかがひとつ出入り口を封じられただけだ。
そうだ、必ずこの森から脱出してみせる。フィアと一緒に、父ちゃんと母ちゃんの所に戻るんだ。

俺にはやるべき事がある。
父ちゃんに、俺が焼いたパンを旨いと認めさせなくちゃいけないんだ。
一人前のパン職人になる前に、あんな奴に喰われてたまるか。
それで俺の人生は幕を閉じるなんて、そんなの嫌すぎる。

・・・もし出られなかったら、その時は、あの化け物を殺してでも生き延びてやるぞ。
フィアの笑顔を曇らせる奴は許さない。
俺はあんまり人を怒ったりするのは好きじゃないが、妹を泣かせる奴は別だ。


フィアは俺の腕の中で静かに目を覚ました。
眠そうに目を擦って、寒さに体を震わせている。

「おはよう、フィア」
「・・・おはよ、お兄ちゃん」

久々に声を聞いた気がする。
ただの挨拶ではあるがなんだか嬉しかった。

「よく寝られたか?」
「あんまり・・・布団の中じゃないから、よく寝られなかった」
「昨日だけだよ。今日は必ず帰るから心配いらないぞ」
「帰れるかな・・・・ここから出られるの?私達・・・」

起きて早々、早くも後ろ向きになっているフィア。
これからピクニックをしようというのに、そんな泣きそうな顔をしないでくれ。



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