投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

スージの森
【家族 その他小説】

スージの森の最初へ スージの森 9 スージの森 11 スージの森の最後へ

2・壁-5

「どういう意味だ、化け物」
『ん?説明が必要なのかい。足が痛むはずだよ』
「・・・・・・・・・」

あの壁・・・なるほど、そういう事なのか。
まさか噂でしか聞いたことがない化け物が、本当にスージの森にいたとはね。
それも、獲物を捕えて逃がさない変な魔法みたいなものまで使えるなんて。

『どっちか1人を喰うまで結界はこのままにしておくよ。喰われる決心がついたら、いつでも呼んでくれ。じゃあな』

化け物は光ったかと思ったら、一瞬でその場から消えてしまった。
ふざけやがって、遊んでやがるんだ。
あんな奴の言う通りにしてたまるか、冗談じゃない。
森を出たいなら生け贄を・・・嫌だ、言いなりになんて絶対に御免だぜ。

フィア、心配するな。
必ず森から出る方法はあるはずだからな。
〜〜〜〜〜

空が暗くなってきた。
冬は日が落ちるのが早いな、困った事だ。

思えば霧が辺りを覆ってしまうなんてかわいいものだったな。
お化けが実在したのは最悪だ。森から逃げられなくなるなんてもっと最悪だ。

キャンプで泊まった事はあるが、森の中で夜を迎えるのは初めてだぜ。
フィアはすっかり恐怖に怯えてしまい、さっきから一言も言葉を発しようとしなかった。
あのバカお化け、フィアをこんなにさせやがって。また出てきたら蹴り飛ばしてやる。
ボールだから蹴ったらかなり飛んでいくだろうな、きっと。

「フィア、寒くないか?」
「・・・・・・・・・」

ふるふるとその細い首を横に振る。

「もう夜になるから、出口を探すのは明日にしよう。真っ暗でよく見えないもんな」
「・・・・・・・・・」

とんでもない事になっちまったよな、俺達。

「・・・お兄ちゃん」

抱き締めていたフィアが、そっと口を開いた。

「・・・・・・ごめんなさい」
「なんで、謝るんだ。悪い事でもしたのか」
「私が、どんどん森の中に入っていったから、あんな化け物に捕まっちゃったんだよね」
「それは違うよ。噂でしか知らなかったんだし、フィアが自分を責める必要なんか・・・」

フィアの頬を一筋の涙が伝った。
まずいぞ、泣き虫だからもう泣きだしたら止まらなくなる。

「ごめんなさい、お兄ちゃん。ごめ・・・なさ・・・」

必死に止めようとしているフィア。でも、こいつにとってそれは難しい。

「・・・泣いていいぞ、気が済むまで」
「お、お兄ちゃん・・・?」

いいんだ、フィア。無理に止めようとしたら、余計に辛くなるだけだ。
だから、出なくなるまで泣いてくれ。我慢させればフィアを苦しめてしまう。


スージの森の最初へ スージの森 9 スージの森 11 スージの森の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前