2・壁-3
「どこだ、ここ?」
「見覚えが無い景色だね。あんまり木が生えてない・・・」
でも、どこかで見た様な気がしてならない。
冬の景色じゃなくて他の季節で・・・
記憶の中の点を辿るうちに、思い当たるものが見つかった。
そうだった、ここは¨穴¨だったっけ。
夏の炎天下の日、泳ぐのにも飽きたから探索してたんだ。遮る葉っぱが全然無くて暑かったなぁ。
上から見たら森に空いた穴みたいだな、友達がそう言ってた。
この場所が穴だというのを告げると、フィアは目を丸くした。
「そんな所まで来てたの?!全然分かんなかったよ」
「霧って怖いな。近付いてた気配すら分からなかったもんな」
自分達の居場所が把握出来て良かった、ひとまず安心だ。
帰り道は頭に入っている。フィアだって同じだ、怯える理由なんてもう何も無い。
どんな顔して帰ったらいいんだろう。勝手に先に行ってごめんな、って謝ればいいか。
帰る途中にある木や道が随分懐かしく感じる。
今までどこを歩いてるのか分からなかったから、進みたい先が見えないのは感覚までおかしくさせてしまうみたいだ。
馴れ親しんだ遊び場も、場合によってはまるで違う場所にしてしまうんだな。
まあ、無事で良かった。
だけどフィアに注意しとこう。冬に行くのは寒いからやめとこうな、って。せっかくならいい思い出にしたいからな。
遊びやすい季節に来た方がいいというのは、今回の経験で分かった。
さあ、出入口が見えてきた。そろそろだな・・・・・
「痛っ」
しかし、進もうとした所で何かに顔をぶつけた。
枝か何か落ちてきたのだろうかと地面を確認したが、何も落ちていない。
「どうしたのお兄ちゃん?なんかぶつかった?」
「ん、なんでもない。気のせいだろう多分」
すぐ先に立て札がある。案内板の裏側だ。
つまりここが出入口だ、さあ今度こそ帰るぞ
「痛っ!」
しかし、また顔をぶつけた。
目の前に障害物があるのかと手を伸ばすと、指先が固いものに触れた。
・・・変だぞ、まるで透明の壁みたいな物でもあるのか?
もう一度指先で触れるとやはり固い感触があった。
雫が落ちた水面みたいな波紋が広がっている。
その壁は、よく目を凝らすと透明ではなく微かに緑がかっている。