「Wing」-5
やっぱりカッコいい
出逢って一時間弱――一緒に歩いて数十分――その間に何回も顔を見たけど本当にカッコいい。城の兵士達には悪いけど、全く相手にならないくらいに。
身長は百八十くらい。すっとした鼻、薄い唇、細く引き締まった顎に、少し日焼けした肌。長い黒髪に紅いヘアバンドがなかなか似合っている。それよりも、見たことも無いような碧い眼。この透き通るような碧い眼が気に入った。これで無愛想で無かったら完璧なんだけど……
「着いたぞ……」
時間が経つのは早いもので、彼の容姿や性格についてイロイロ考えてたら、もう街に着いてしまったらしい――ってここは?
「えっと、ここって?」
「じゃあな……」
「えっ!?ち、ちょっと! ちょっと待って!!」
彼が立ち去ろうとしてたので、慌てて呼び止める。
「何だ……?」
「何だ、って……あの、ここ何処?」
「このまま真っ直ぐ進んだら街が見えてくるはずだ。じゃあな……」
「じゃあな、じゃ無くて!」
「サヨウナラ……」
「そういう意味でもなくて!」
「ならどうしろって言うんだ?」
彼が振り返って言う。流れる髪が美しい。
「普通街まで送るって言ったら、その通りにするもんでしょ? まだ着いてないわよ!?」
「街は苦手なんだ……」
「だからって、こんな所でサヨナラはないわよ。せめて入口のところまで一緒に来てよ……」
悲しそうな顔をして彼の眼を見つめながら訴えかける―それにしても本当に綺麗な眼だ。正直この眼を、彼を見ていたいだけかもしれない―
そのまま数分の時が流れた。すると諦めたように、ため息をついて彼が口を開く。
「門の所までだぞ……」
「うん!」
街の入口までくると、さすがにもう引き止める理由が思いつかなかった。ここでお別れか……
「じゃあな……」
仕方ない、よね?
「うん、またね。バイバイ」
何故か急に寂しくなってきた。もう会えないのかなぁ。
暫くの間ボーっと彼が去って行った方向を見ていた。
ポツッ――
雨が降ってきた。濡れたく無かったのでその場を離れ、急いで一番近くの店に入った。
その店は日用品や雑貨などを置いていた。傘を買おうとしたが、あいにくお金を所持していなかったので、雨宿りすることにした。隣にいた恰幅のいいおばさんと喋っていると、男の人が駆け込んできた。
「いや〜、まいったまいった。急に振り出すんだもんなぁ」
店のタオルを勝手に使って頭を拭き出す。
「カイザ……タオル一枚4ゴート……」
「おばちゃん、ツケといて」
「またかい? まったくしょうがないね……」
このおばさん、店長さんだったんだ……。
ふと男の人と眼が合った。二十四、五歳くらいかな。
「おばちゃん、このお嬢さんは?」
「クレアちゃんっていうんだ。ここにいる理由はあんたと一緒だよ」
「俺はカイザ。ヨロシクな」
「あ、はい。こちらこそ」
差し出された右手を握り返した。
「ここらで会ったのも何かの縁。雨が止むまで、人生について語り合おうぜ」
「はあ……」
訳が分からないけどとりあえず雨があがるまでの暇潰しにはなるかな。