「Wing」-39
「……あの、な……」
耳元で囁かれる。
「……言ってくれたよな……俺が好きだって…………」
声が少し震えて聞こえるのは気のせいじゃないと思う。だって抱いてる腕にかなりの力が入ってる。少し痛い。けど嬉しい。
「……多分……多分俺も……」
「俺も？」
私の顔、絶対に赤くなってる。
「……俺も……あんたが……クレアのことが…………」
段々声が小さくなっていって、最後の方ははっきり聞こえなかったけど、気持ちは十分伝わった。
「……ゴメン……」
だけどいきなり謝られたもりしたから、かなりびっくりした。
「何で謝るの？」
もしかして私に言ったこと、後悔した？
「……多分、じゃない……」
そうじゃなかった。大きく息を吸った彼。ゆっくりと吐いて、それで、
「……多分じゃなくて……絶対、好きだ………………だから……」
もう一度深呼吸してから、
「……結婚しよう……」ってはっきり言ってくれた。
彼に抱き締められたまま頷く私。声の出し方なんてとっくに忘れてる。嬉しくって涙が溢れる。彼の顔がぼやけてはっきり見えない。
「……そろそろ帰ろうか……」
私達の頭上で光る半分隠れた月が、優しく微笑んでくれていた。
――二年後、
「レオン、マリアは？」
「……義父さんのところだろ」
「またぁ？ パパ、本当にあの娘にべったりだね」
「……だな……」
「この子が生まれたらどうなるのかな？」
「大変だろうな……」
「だよねぇ。一人であんなになるんだもん。それはそうとレオン」
「何だ？」
「この子の名前、次はレオンが決めてね」
「もう決めてある……」
「考えてたなら教えてくれればよかったのに。で、どんなの？」
「女の子ならテレサ……男の子ならライアス……」
「ちなみにどういう意味？」
「テレサは万人を愛し、万人に愛されるように……ライアスは獅子のように強く、誇り高くあるように……俺も親父もそういう風につけられたからな……」
「テレサにライアスか……うん。いい名前だね」
「……まあな……」
「……結局パパの言った通りになったね……マリアが生まれたのってあれからちょうど一年後でしょ？」
「……そうだな……最低二人って言ってたし、三人目の名前も考えとくか？」
「なら次は私の番だね」
「四人目は俺だな……」
「五人目は……パパに決めさせてあげよっか」
「……そうだな……」
「……」
「……」
「ねえ、レオン……」
「……ん？」
「私、すごく幸せ……多分これからもずっと」
「俺もだ……」
「私のこと、好き？」
「ああ……」
「ちゃんと言って！」
「…………愛してる……世界中の誰よりも……」
「ありがとう……」
「……どういたしまして…………」
青年の瞳は空のように碧かった……透き通るような碧だった…………
end