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「Wing」
【ファンタジー その他小説】

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「Wing」-37

 あ〜あ、来ちゃったよ……
「お父様。クレア、参りました」
 木の扉が鉄で出来た物のように重そうに見える。それでも開けない訳にはいかない。右側の扉のドアノブに手をかけ、ゆっくりと押す。
「どのような用でしょうか……」
 何とく顔を上げる気になれない。俯いたまま尋ねる。
「先刻から申しておった者がこちらに着いたので、お主に紹介しようと思ってな」
「そうですか……」
「どうした? 顔を見せんか。相手に失礼であろう」
しかたない……面だけでも拝んどくか……
 ゆっくりと頭を持ち上げる。パパの隣に立っていたのは……
「え?」
どういう事?
「彼がワシの選んだ男だが……不服か?」
訳が分からなくて呆然とする。
「お主が嫌ならばこの話は無かったことにするが……」
慌てて首を横に振る。何度も何度も。
「ならばどうするのだ?」
ずるいよ。聞かなくても分かってるんでしょ? 彼の方を向いてお辞儀する。
「よろしくお願いします」

 私が言った後で、パパの隣に居た彼が私の前まで歩いて来て、ひざまづいた。
「私の名はレオン。ノーザンド王国王子、レオン・ノーズランド・ギルバートです。この度、貴女様の夫となるべく、南の地より馳せ参じました。どうかよろしく」
と言い、私の手を取って、甲にキスをした。
 ヤバイよ。頭がポーッとしてきた。
「は、はい」
返事をするので精一杯。

「話はついたようだな。婚姻の儀は明後日行う。それでよろしいな。それともう一つ…………孫は最低二人は欲しい。一人目は……そうだな。来年中にでも頼む」
「パ、パパッ!!」
「ハハハハハ! もう下がってもよいぞ」
「も〜パパったら……失礼します」
「……失礼、しました……」
 彼と二人で部屋を出る。
「……なあ……」
「なっ、何!?」
妙に意識してしまって声が上擦る。
「……あの約束、今守ろう……」
「ええ!?」
急に何言い出すの? ちょっと待ってよ……いきなりそんな……
今の私、絶対顔真っ赤だよ。恥ずかしい……

「……前に、もう一度飛ぼうって言っただろ? あれのことだ……」
 声を殺して笑う彼。やだ、何を一人で盛り上がってるんだろう、私。パパの話真に受けちゃって。

「……行くか?」
そう言ってベランダに出る彼。
「うん!」
私はニ度目の大空へ飛び立った。



 眼下に広がり続ける世界。眼前に堂々と横たわる地平線。その裏に隠れようとする燃える太陽。何度も見てきた夕日も、見る場所を変えるだけでいくつもの顔を見せてくれる。世界は丸いらしいけど、この景色を見てたらそんな事はやっぱり嘘で、この世界は本当は平らなんだって思ってしまう。
「恐くないか?」
「ううん、大丈夫。高いところ、好きだから」

 翼を羽ばたかせ、さらに高く飛ぶ彼。私をいわゆるお姫様抱っこしながら。前はカイザさんもいたから片脇に抱えられただけ。だけど、今は私しかいない。彼の首に手を回して抱き付く。
「どうした……?」
碧い瞳と緑の眼が私の目を覗き込む。長い白銀の髪が風になびく。


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